柳澤 雅之 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

柳澤 雅之

masa cseas.kyoto-u.ac.jp

部門・職位

環境共生研究部門 准教授

専門

東南アジア生態史、ベトナム地域研究、熱帯農学

研究分野 / キーワード

・東南アジア生態史
・ベトナム農村開発史
・地域情報学



研究概要

東南アジア生態史

東南アジアの人びとの生業体系は生態環境と密接な関係をもって構築されてきたのは事実だが、個人やその集積としての集団が生態環境とどのように相互作用をもっているのかという視点だけでは、現在の人と自然の関係を理解することはできない。生態環境を利用するための現在の社会経済制度やインフラ整備とその歴史的な蓄積が国や地域によって異なり、国・地域によって生態環境の利用のしやすさ/しにくさの基盤が異なるからである。そのため、特定地域の生態環境利用を理解する際、あるいはその地域間比較を行う際に、生態環境基盤の利用可能性(容易さ)をまず考慮する必要がある。たとえば、農業経営を調べる場合、収入と支出が他の生業との関連や農業政策等に影響されているのは当然のことだが、そもそも、作物や品種の入手可能性(容易さ)やかんがい排水の利用可能性(容易さ)などが農業を営む上での農民の重要なイニシアティブになるが、それらは収入や収支というデータに十分反映されているとはいいがたい。また、農業技術も同様に、地域の生態環境に適しているのはもちろんのことだが、それは歴史的に改変された生態環境への適合可能性であり、かつ、現在とこれまでの農業普及政策や保護あるいは促進政策、産業体系の中の位置づけ等と関連して農業技術が導入される/されないの判断がなされる。本研究では、現代における人と生態環境の関係を、生態環境基盤の利用可能性から理解すると同時に、それを長期の生態史の中に位置づけることを目的とする。

ベトナム農村開発史

一般に強固な村落結合をもつとされるベトナム農村社会は、第二次大戦後、急激な社会主義化、度重なる戦争、市場経済メカニズムの導入、経済発展という激動の時代を経てきた。この過程で、村落結合の強さは村人にとって、外部の大きな変動から村の生活を守る役割を果たしたり、逆に、変化への対応に足かせとなったりしてきたし、歴史の中で村落結合そのものも大きく変容を遂げてきた。本研究では、現在におけるベトナム村落結合を対象にして、そのグローバル世界における役割を考えると同時に、ベトナム村落結合の歴史的意義について考える。

地域情報学

フィールドノートや景観写真、村のさまざまな情報など、かつてのフィールドワークによって得られた記録をデータベース化しその利用を考える。それにより、過去の土地利用や生業体系の再構築に利用可能な新出資料としてのフィールドノートの活用を考える。

外部資金獲得(日本学術振興会・科学研究補助金)

種別 テーマ 期間 代表/分担
基盤研究(C) データベースをつうじた地域と科学の知の統合による気候応答型居住環境の創出 2018 – 2021 分担
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』 地域研究に関する学術写真・動画資料情報の統合と高度化 2016 – 2018 分担

外部資金獲得(その他)

  • フィールド・データベース・プロジェクト
    第二次大戦後、海外学術調査が盛んとなり、さまざまなフィールドノートが研究者によって記録された。これらの資料から、かつての生態環境や生業体系を知り、その歴史的変遷を理解する一助とするためのプロジェクトを進めている。これまで、京都大学東南アジア研究センター(当時)に長らく在籍した高谷好一氏のフィールドノートの記録を地図上で可視化させたデータベースを構築している。
    http://archiving.jp/~yurina/fieldnote/app/
  • ベトナム村落研究プロジェクト
    ベトナム紅河デルタの一村落を対象に、1994年以降継続する総合的村落研究プロジェクト。当初は、東京大学桜井由躬雄教授によって進められたが、氏の逝去により、2013年以降は、有志による研究プロジェクトが進められている。多様な情報を収集しているが、特筆すべきは、1995年以降のほぼ5年ごとに実施してきた、一集落の全世帯を対象とした社会経済調査であり、これは現在も継続され、長期の定点調査として重要な価値を持ってきた。将来的には、他の地域における同様の長期定点調査を比較研究し、長期村落比較研究を試みる。