The Nippon Foundation Fellowships for Asian Public Intellectuals


Fusanosuke Natsume 夏目 房之介

夏目 房之介

Fusanosuke Natsume
夏目 房之介

マンガ・コラムニスト
学習院大学大学院教授

http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/

プロジェクトのテーマ

マンガ、アニメの海外浸透状況の研究(タイ、インドネシアの事例研究)

プロジェクト概要

日本製マンガやアニメーションの、タイ、インドネシアにおける浸透状況を検証する

研修国

タイ・インドネシア

自己紹介

API調査について

2001年6〜7月にかけてタイ、インドネシアにおいて日本マンガの浸透現象、現地マンガ・コミックの状態、TVアニメなど大衆文化の諸相を調査。日本マンガの「世界化」現象を通じて、異文化間の文化的対立・受容・融合の実情を観察した。マンガ・コミックスは、大衆社会の娯楽媒体であり、異文化衝突による混合文化から成熟するにしたがって地域化され特異性を発揮するとの観点から、中間層の成熟度との関連をタイ、インドネシアにおいて検証した。

タイでは、新興中間層子弟向けの日本マンガ翻訳及びその影響を受けた現地コミックと伝統的な廉価コミックに二分され、インドネシアでは伝統的な貸本コミックはほぼ壊滅状態でアッパークラス向けに日本マンガや海外コミック翻訳がおこなわれていた。これは、二国における経済状態と中間層成立の度合を反映しているように思われた。ただ、両国とも中間層子弟に熱烈な若いマニア層がおり、情報誌を作り、自国のアーティスト育成とオリジナルのマンガ・コミック創造に取り組んでいた。

結果による仮説

日本マンガと各地域の関係は、たんに一方的な進出関係ではなく、ポップ・ミュージックや映画同様に、長期的には異種交配的な文化創造現象となるだろう。いわば地域性と世界共通性の二つの中心をもった楕円状現象である。

私はここに、異文化間のコミュニケーション・ツール、相互理解の機能を期待したい。もちろん、大衆の動向によっては逆に衝突、攻撃、煽動の具ともなりうることは留意すべきである。

その後の活動

講演、シンポジウム参加、TV取材などで、豪州、英国、中国(長春、上海)を訪問、調査。以下のような著作、活動をおこなう。

文章
  • 「日本マンガは世界を制したか」文芸春秋 01年9月号掲載
  • 「アジアコミックそぞろ歩き」ダ・ヴィンチ(メディアファクトリー) 01年11月号掲載
  • 「東アジアのコミック事情と可能性 貸本マンガのルーツを求めて」アジアセンターニュース(国際交流基金) 02年3月号
  • 「東アジアに拡がるマンガ文化」叢書『アジア新世紀6 メディア 言論と表象の地政学』(岩波書店)所収 03年
単行本
  • 『マンガの深読み、大人読み』イースト・プレス 04年
  • 『マンガ学への挑戦』NTT出版 05年
  • 『マンガは今そうなっておるのか?』メディア・セレクト 05年
調査
  • ロンドンにて講演、シンポジウム参加(02年)
  • 中国のマンガ状況調査(05年)など。