Toshiyuki Doi 土井 利幸

プロジェクトのテーマ

グローバル化するアジアにおける言語・文化・生物多様性の保全～少数先住民族の試みに学ぶ

プロジェクト概要

タイ各地で少数先住民族が実践している、言語と文化、環境と資源、少数民族としてのアイデンティティを保全するさまざまな試みを、フィールド調査や聞取りを通して記録・分析・評価します。特に、タイ東部チャンタブリ県に住み、モン・クメール語系のチョン語を話すコミュニティに焦点を当て、すでに10年ほど前からチョン（Chong）の人びとが行ってきた、記録のための文字体系の開発、森や滝などの屋外での子どもたちに対するチョン語教育、チョン民族博物館の設立といった活動を詳細に記録・分析することで、チョンの人びとの試みの成果と課題を明らかにします。調査の結果は映像化し、報告書とあわせて、グローバル化するアジアで、どのように文化・環境・アイデンティティといったものを保全・再構築すればよいかの議論に役立てられればと思っています。

研修国

タイ

自己紹介

大学学部での専攻は英語、大学院では言語教育や社会言語学を学びました。日本と米国で、英語・日本語教員、専門学校・大学での日本語教員養成を経験したあと、1990年代半ば、日本で移住労働者問題と阪神淡路大震災の被災者の救援復興に関わったことがきっかけで、NGO活動に参加するようになりました。2001年、環境NGOメコン・ウォッチの職員となり、主にタイとカンボジアで日本の政府開発援助（ODA）がもたらす環境社会影響を調査し、その結果をもとに日本の財務省やアジア開発銀行（ADB）の責任者と協議することで、環境社会影響の軽減・回避に努めてきました。もともと、社会的な問題の解決に寄与できる言語学を実践することが希望でしたので、10年間のNGO活動での経験を活かして言語の問題に取り組んでみたいと考え、このプロジェクトを実施することにしました。英語もタイ語も歌を通して学んだ部分が多く、英語では「フォークソング」、タイ語では「生きるための歌」というジャンルが好きです。

近況

APIプログラムを終えたのちもタイ・バンコクを拠点に、メコン・ウォッチでのNGO活動および言語学関連の調査を続けています。2015年3月には、タイ・CLMVメンバーとともにMekong Mobile Workshop（MMW）に参加し、北東カンボジアやプノンペンを訪問しました。また、Collaborative Grantで、タイ・ラオス・カンボジアのAPIメンバーらと三か国の民話や伝承を収集・分析し、英文のブックレットにまとめました。

最近の主な活動成果

1. 執筆
2011年　『森の再生、言葉の再生～生物・文化多様性の回復を目指すタイ・チョン族の挑戦～』　東京：メコン・ウォッチ
http://www.mekongwatch.org/PDF/Chong_booklet.pdf

2013年（編著）　『ツールキット　自然と私たちの未来を考える～メコン河流域と日本』　東京：メコン・ウォッチ
http://www.mekongwatch.org/platform/bp/index.html

2015年（共著）　「座談会　水が教えるアジアと日本の未来～自然・技術・共同体」　アジアの未来への展望NGO協議会（編）　『アジアの共生社会を紡ぐ日本の国際協力NGO～私たちが訴えたいこと、共有したいこと』　東京：アジアの未来への展望NGO協議会　7～14ページ

2015年（共著）　Plants, Animals, Fish and Spirits: How People Live with and Talk about the Environment in Rural Cambodia, Laos and Thailand. Tokyo: Mekong Watch

予定　“Chong Language Revitalization Project”. In Suwilai Premsrirat and David Hirsh (eds.) Language Revitalization: Insights from Thailand. Bern, Switzerland: Peter Lang International Academic Publishers.

2. 口頭発表
2014年9月9日　「河から見た水」　『アジアの水問題講演会』　宮城県仙台二華高等学校
https://www.youtube.com/watch?v=TmYfKjjoDo4

2014年12月5日　“Rethinking and Reshaping Japan’s ODA to Mekong: Lessons from Civil Society”. 2014 International Conference on Development and Cooperation of the Mekong Region Rethinking the Sustainability of the Mekong: A Critical Understanding of the Roles of Mega-development and ODA. Seoul National University Asia Center (SNUAC), South Korea.