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Mizuho Ikeda 池田 瑞穂
プロジェクトのテーマ
コミュニティによる文化遺産の保護と教育的活用
プロジェクト概要
調査地であるタイ北部プレー県は、ランナー王国時代、主にチーク材の輸出で発展した歴史背景をもつため、県庁所在地のプレー市旧市街にはチーク材で建てられた宮殿や屋敷など多くの建築物を今も見ることができます。旧市街の成立は13世紀頃といわれ、同時代に作られた7つの寺院の配置や通りの設計など街そのものが仏教の宇宙観を表していると考えられています。
プレーのこうした歴史的背景や環境は、当然のことながら、当該地域に住む人々に現在も影響を与えています。ここでは、文化遺産は過ぎ去った「過去のモノ」ではなく、現代に生きる住民の様々な生活の側面に関係する「生きた遺産」として存在しています。この「生きた遺産=リビングヘリテージ」という考えた方こそ、コミュニティによる文化遺産の保護と活用を考える際に重要な鍵となるのではないか、と確信し当該地域で調査を始めました。
本プロジェクトでは、中学校の社会科教員への文化遺産ワークショップを通じてプレー県各地に残された遺産に対する理解を、ワークショップ主催者側と教員側の双方から深め、さらに、得られた情報を各々がどのような方法で教育現場へ還元し、文化遺産と係わっていくのか、といったプロセスに注目していきたいと思います。また、研究者が一方的に自らの研究のため、調査対象者から情報を搾取するのではなく、調査に係わる全ての人間にとって相互利益のある研究を追求することも本研究の重要な課題の一つです。
研修国
タイ
自己紹介
大学学部と大学院修士課程で考古学を専攻し、発掘などのフィールドワーク経験を積む傍ら、「文化遺産に係わる関係者」と、「関係者ではない一般の人」との間に存在する、遺産に対する認識の違いについて関心を持つようになりました。修士課程終了後、この問題意識を実践的な活動を通じて深めようと、青年海外協力隊に参加し、中米エルサルバドル共和国へ考古学隊員として2年間派遣されました。エルサルバドルでは、考古学を一般の人にもっと身近に感じてもらえるように、配属先である遺跡公園内博物館や地元小中学校などで体験学習を軸とした考古学教室を開催しました。さらに、教員や子供の両親からの要望により、社会科授業で使える考古学情報や様々なハンズオン・アクティビティを紹介する研修会なども開きました。当該国での経験を通して、文化遺産を永続的に維持していく為には地域住民との連携・協力が欠かせず、さらには遺産保護と活用に必要な知識と技術を持った地域の人材を育成することの重要性を強く感じました。そのため、博士課程では考古学遺物や遺跡のみに注目するのではなく、それらをとりまく人間、そして社会環境も視野に入れた包括的な研究をしたいと考え、文化人類学を専攻することにしました。本研究では、文化遺産を教育現場へ還元し、それを通じた人材育成について理論と実践の両側面からアプローチしていきたいと考えています。。