The Nippon Foundation Fellowships for Asian Public Intellectuals


Seiji Kageyama 景山 誠二

景山 誠二

Seiji Kageyama
景山 誠二

鳥取大学医学部感染制御学講座
ウイルス学分野
教授

http://www.med.tottori-u.ac.jp/virus/6022.html

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プロジェクトのテーマ

感染症とその病原体の国際監視態勢の整備,とくにフィリピンにおけるエイズの流行の阻止に関する研究

プロジェクト概要

感染症の流行の発生源となることの多い亜熱帯・熱帯地方に、感染症とその病原体の国際監視態勢を整備する。特に、病原体の変化とその移動、集団免疫についての解析作業に重点をおき、人と物資の選択的・集中的な投入による「流行の種火の消火」を実現させたいと願っている。

研修国

フィリピン

現在の活動

 様々な人々と共同して、日本を含むアジアのエイズ流行の阻止と軽減の方法を考えている。

 アジアのエイズ流行のベクトルはタイやカンボジアから端を発し、同心円状に外へと向い、20世紀最後にはインドネシアに到達している。将来、フィリピンを通過して日本へと達するようにも見える。あるいは、朝鮮半島を南下して日本へ達するのかもしれない。いずれにせよ、島国への波及はこれからが本番である。

 活動の舞台を、古くからの友人が多い、東南アジア・フィリピン共和国に設定した。その後、インドネシアの活動も加えた。日本と同じく、ユーラシア大陸東端の島国である。現在までの解析結果は、出稼ぎ労働者、男性同性愛者、注射薬物使用者、性産業従事者の順番に、感染伝播の連鎖が続くことを示している。特に、注射薬物使用者集団では、非常に早く広がる。また、男性同性愛者、出稼ぎ労働者に感染者が多いのも特徴のひとつである。男性同性愛者に多い点では、日本も同じ傾向である。憂慮すべき点は、注射薬物使用者へとウイルスが波及し初めていることであり、不幸中の幸いは、その地域が限られていることである。このように、フィリピンのエイズ事情は、やっと透明度が少し増した。すでに、流行様式の解析結果から、有効な介入点を試す段階に入ったと感じている。

 ある国連の担当官から、「これから、本当の意味でのエイズの初期流行を観察するのだ」との意見をもらった。全く同感である。アフリカもアメリカも流行の飽和点から、観察をはじめている。日本は、ごく初期である。情報が蓄積した最も遅い時期の流行であることを幸運に思い、本格流行を前にしてその制御法を見極めたい。

 ウイルス学の基本知識と技術を駆使して、人から人へと伝播してゆくウイルスの流れを正確に予見したい。エイズ問題に限らず、疾患・病原体情報をあらゆる拠点から科学的に発信し、世界的なプロフェッショナル情報ネットワークを作ろうとする趨勢は、そう遠くない未来に、あたりまえの事柄になるように思う。その先駆けになればと願っている。

(2012/12/17改訂)