The Nippon Foundation Fellowships for Asian Public Intellectuals


Ritsuko Mizuno 水野 立子

水野 立子

Ritsuko Mizuno
水野 立子

JCDN
アーティスティック・ディレクター

http://www.jcdn.org/

プロジェクトのテーマ

アジア諸国におけるコンテンポラリーダンス・ネットワーク設立に向けて

プロジェクト概要

ネットワーク設立に向けて、"いま、アジアのダンスに何が起きているのか"を知る為に、振付家・ダンサー、プロデューサー、劇場関係者、ダンス教育の現場に携わる人、ダンス評論家、など、ダンス関係者にインタビューを行い、そこから、アジアのダンス環境の現状や課題を探り、現場にいる皆さんが、何が足りないと思っているのか、どのようなネットワークが必要かと思っているのか、をリサーチした。また、古典芸能・伝統舞踊・生活儀式などが、どのようにコンテンポラリーダンスに影響をあたえ作品が創られてきているのか、その関係性を探る。インドネシアには1ヶ月滞在し39人と、マレーシア、タイには各2週間づつ滞在し、マレーシアでは19人、タイでは11人にインタビューを行った。

研修国

インドネシア・マレーシア・タイ

自己紹介

私は、社会とダンスを繋ぐことを目的に2001年設立したNPO法人 ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)で、アーティスティック・ディレクターとして活動しております。

JCDN準備室最後の年、2000年に開始しました「踊りに行くぜ!!」という全国約20箇所で毎年秋に開催しておりますダンス巡回プロジェクトも、僭越ながらAPIフェロープログラムと同じく、今年が10周年を迎える記念年となりました。現在、10周年の記念本を編集しておりまして、あれこれと10年前に思いを馳せますと、この10年でダンス環境は目覚しく変化したといえます。当時“コンテンポラリーダンス”という言葉さえ聴きなれなかったものが少しずつ浸透し、何よりコンテンポラリーダンス事業を扱う主催者、作品を創るアーティストが全国各地に増え、子どもからシニア世代まで、ダンスに触れ自らがワークショップに参加し、ダンスをつくり踊ると、いう機会も増え始め、ダンス環境の普及は喜ばしいことです。各地でダンスの力で社会を変革していける、という可能性に目が向き始めてきた、といえます。

一方で、経済破綻に影響を受け“芸術は、あってもなくてもどちらでもよいもの”という日本の政策は、民主党になったところで急転換するわけではまだなく、今後の日本の芸術政策を“芸術は社会にとってなくてはならないもの”という、人の育成、社会のはぐくみにとってかけがいのない存在、という政策に転換していくには、いましばらく時間がかかりそうです。NPOとしての活動形態には、単年度予算の助成申請しかないなど、まだまだ芸術政策の扱いは問題が山積みです。しかし、もとから苦境にいるアート関係者はある意味、急変したわけではないので、チャンス到来ともいえます。たくましく生き延びますます、活動を活発にしていきます。

さて、APIフェローでインドネシア、タイ、マレーシアにリサーチに行った翌年2007年から、「踊りに行くぜ!!」アジアツアーを3年間で、7カ国13都市(において継続して開催してきました。

2007年 KL/マレーシア、バンコク/タイ、マニラ/フィリピン、ソロ・ジャカルタ/インドネシア
2008年 北京・広州/中国  ※国際交流基金主催
2008年 デンパサール・ジャカルタ・ジョグジャカルタ・バンドン/インドネシア
2009年 チェンマイ・バンコク/タイ、 KL/マレーシア、プノンペン/カンボジア、ハノイ/ベトナム

昨年は、ベトナム、カンボジアという新たな開催地も増え、また、日本の舞台芸術を紹介するというだけでなく、アジア各地の人たちとダンス・クリエイションを行い、作品をつくるというダンス国際交流プログラムも本格的に取り入れました。

アジアの各地でプログラムを実施する際に、APIフェローの各地のメンバーの方々に観にきていただいたり、参加いただき交流したいと思うのですが、思うように実現しませんでした。ジャンルを越えたプロジェクトを是非、行いたいという思いはあるのですが、実現するまでに至っていず残念です。ひとつのジャンルにこだわらずアジア各地でフェロー同士の仲間が、違う角度から先駆的な試みを行い、アジア全体世界を豊かにすべくプロジェクトを立ち上げられればと思います。この3年で培ってきたアジア各地の同じフィールドにいる仲間、そして、他ジャンルのフェローとダンス・アートの可能性を活かした試みを行うための方法を考えたいです。
(2010年2月)