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Kaori Fushiki 伏木 香織
プロジェクトのテーマ
「オトノミ・ダエラ」時代の芸能と社会の反応を通じた地域アイデンティティの再構築
プロジェクト概要
国民国家において文化的マイノリティである人々は、自分たちのローカル・アイデンティティを芸能などを通じて、どのように表現しようとしているのか。そしてそのローカル社会はどのように反応したのか。この問題を、インドネシア共和国バリ島を一例として、明らかにしようと試みたものである。調査は子供たちや女性たちのガムラン関連活動や、若者たちの「バリ式の」文化活動を中心に行ったが、この調査を通じて明らかになったのは、「バリの」芸能活動は、地方自治法施行以降の現地社会において、非常に政治的なトピックとなった、ということであった。
研修国
インドネシア
自己紹介
現在していること
研究、教育、演奏、執筆、講演、プロデュースなど
近年の活動
近年の活動の空間的中心は、シンガポールを中心としたマレー半島からインドネシアにかけての広い範囲になっています。
街に展開される音や芸能への興味が入り口となって、それらとともに暮らす人々とそのまとまり、社会、その空間的広がりやそれらの時間軸にそって変わりゆく姿、その中に暮らす人々の意識を探っています。近年はシンガポールの路上や寺廟で展開される各種芸能・儀礼のうち、歌台(getai)や戯劇、過平安橋や中元普度儀礼などについて研究成果を公開してきました。また無形文化遺産リストに登録されている南音(Nanyin)という音楽の南洋での展開、特にシンガポールの音楽社の働きと国家の文化政策との関係性について執筆した論文は2015年末あるいは2016年初頭にTransglobal
Sounds: Music, Youth and Migration, João Sardinha and Ricardo Campos eds.,
Bloomsbury Publishing, Londonの1章として出版される予定です。
また2014年はCollaborative Grantをいただき、マレーシア・ペナン、シンガポール、インドネシア・東ジャワから台湾、中国を結ぶ人形劇・布袋戯(Potehi)の共同研究とそのシンポジウム、台湾とインドネシアのグループの日本招聘公演を行いました。その公演記録DVDは2015年4月頃東京で、研究成果論集は11月あるいは12月に台北で出版される予定です。今回のこの共同研究では、布袋戯という芸能のもつ創造力が、地域ごとに社会的政治的状況に適応することで、それぞれの新たな形を生んできたことも浮き彫りになりました。さらには共同研究・交流のなかで、新たな地域間交流が生まれたほか(マレーシア⇔インドネシア、インドネシア⇔台湾ほか)、新規にミャンマーでの布袋戯の存在が明らかになり、台湾の研究者がミャンマーで研究を始めるなどの動きも生まれました。今後もこのGrantをきっかけとした各種の活動が継続、発展されることを期待しています。11月あるいは12月には出版記念をかねて、台北で国際シンポジウム、国際布袋戯フェスティバルも開催いたします。ぜひご高覧いただければ幸いです。
活動の根底にあるもの
私が始めに興味を持ったのは、独特の響きを持った音楽でした。それまでに私が幼少時より訓練してきた西洋の音楽とはまったく異なるその音楽は、インドネシア共和国バリ島のガムランで、それを聞いた時、私は目から鱗が落ちる思いがしました。当初は演奏してみたいとの思いから取り組んだガムランの演奏も、やがてそれが生活の中に「生きている」音楽であることがわかってくると共に、私にとって興味の対象は音楽そのものよりも音楽の周辺へと変化していきました。人々はいかに音楽をするのか、音楽を通してどのように人と人とのコミュニケーションが成り立ち、社会ができているのか、という点です。従って研究は主として、音楽のそと側、音楽に関わる人々や社会組織、社会的環境が対象となっています。