The Nippon Foundation Fellowships for Asian Public Intellectuals


Tsukasa Iga 伊賀 司

伊賀司

Tsukasa Iga
伊賀 司

神戸大学国際協力研究科 
研究員

京都大学 東南アジア研究所
機関研究員

プロジェクトのテーマ

マレーシアとインドネシアにおいてメディアが政治体制に果たす役割の比較研究

プロジェクト概要

本研究の目的は民主化を含む政治体制の維持・変動にマス・メディアがどのような役割を果たしているのか、を明らかにする。90年代末まで「権威主義的」体制下でメディアに強い統制がかけられていたインドネシアとマレーシアは現在、一方は民主化が進展する中でメディアが乱立し、他方は従来の体制が維持されてメディアの実態もあまり変わっていないという状況にある。こうした現実を考慮し、まずは90年代以降の両国のメディアの実態把握を進める。そのうえで、比較の観点から「自由なメディア」をもたらす要因-政治的自由化、市場競争、ジャーナリストの倫理向上、社会経済構造の変化など-は何であるのかについて考えたい。

研修国

マレーシア、インドネシア

自己紹介

私は現在、博士論文を上記のような関心を持って執筆しようとしています。しかし、私は最初からメディアに関心があった訳ではありませんでした。博士課程に進んでマレーシアに2年ほど滞在する機会がありましたが、その時はマレーシアの政治体制と政党との関連に関心を持っていました。

しかし、2年間のマレーシア滞在中、偶然に華字紙の業界を知ることになり、華字紙業界内では与党やそれと近い企業家が伝統ある華字紙を買収しようとしていることに対し、反対運動が起こっていることを知りました。こうした買収反対や「メディアの自由」を訴える運動を観察しているうちに、メディアと政治体制との関係に興味を持ち、メディアが私の従来関心があった政党との関係、またマルチ・エスニック社会・マレーシアの政治・社会構造を理解するための重要な手がかりであると考えるようになりました。また、より個人的な理由として、華字紙の買収反対運動を主導していたのが自分と同年代の30歳前後の若い作家やジャーナリスト、オピニオンリーダーであったために、私自身がこの運動を身近に感じたこともあります。

インドネシアについて現段階では文献で読む限りの情報しか知りませんが、マレーシアが90年代末に政治改革運動の時代をむかえた際、インドネシア発の言い回しやディスコースが盛んに使われたことからも分かるように、両国の関係は政治的文脈に限ってみても注視すべきものであります。本プロジェクトとの関係で言えば、両国を媒介するメディアがどのような政治的概念やディスコースを運んだのか、この点にも興味を持っています。