cseas nl75 新任スタッフ紹介

木村里子

環境共生研究部門・准教授
博士(情報学、京都大学)
専門分野は水中生物音響学、環境影響評価

2022年4月に着任いたしました、木村里子です。京都大学の農学部、大学院情報学研究科を卒業し、名古屋大学で学振PDを3年勤めた後、京都大学のフィールド科学教育研究センター、国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター、プラットフォーム学卓越大学院で研究員や教員を勤めてまいりました。長くお世話になった京都大学において、さらなる研究の機会を与えていただき、改めて深く感謝申し上げます。

私は、学部4年生の頃から水圏大型生物(特に小型鯨類のスナメリ)の行動や生態の研究に取り組んできました。最初に参加したフィールドワークは、中国揚子江のスナメリ調査でした。中国の経済発展、開発の進む揚子江、行き交う大型船の信じられないほどの数、人々の暮らし、いなくなったヨウスコウカワイルカ、急激に減っていくスナメリ。「こんなに数を減らして人為的な影響を受けてかわいそうだ」と思うよりむしろ、「この環境でまだ生息可能なのか」と驚きました。全てに圧倒され、研究にのめりこみました。その後、メキシコやタイ、インド、デンマーク、マレーシア、日本と様々な地域でフィールドワークを重ねましたが、調査を通じて、動物の行動や生態を知ると同時に、その地域の環境、そこで暮らす人々の生活と築かれた文化に触れることはとても面白かったです。広く分布するイルカは、同種でも、地域ごと(個体群や群れごと)に行動や生態が異なったり、時には同じ性質を共有していたり、比較してみると非常に興味深いです。今回CSEASにご縁をいただいたことで、私は動物の地域研究をしていたのかなと腑に落ちました。

近年は、コロナ禍に加え、子供がまだ幼いことや、先方の事情等もあり、あまり海外渡航をせずに、主に日本でのデータ取得や今まで取り溜めたデータの解析をおこなっています。JST創発的研究支援事業や科研費(若手・学変A公募研究)のプロジェクトを通じて、音響解析手法、ドローン映像による海棲動物の行動解析手法の確立を試みており、できるだけ汎用性の高い手法を開発して、将来的にアジア圏で展開させたいと考えています。また、沿岸における船舶航行や洋上風力発電などの騒音が生物や環境に与える影響評価(環境アセスメント)、水族館などの飼育施設における動物のストレス評価研究にも取り組んでいます。

多様な研究が自由闊達に進められるCSEASにおいて、皆さまと一緒に学際的な共同研究を進めていければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。