海域アジア遺産調査プロジェクト(MAHS) は、モルディブ、インドネシア、タイ、ヴェトナムを調査地として、この地域における長い交流の歴史の中から生み出された重要な建築・物質文化をデジタル技術で記録・保存し、オープンアクセスで利用できるデータベースの構築を目指しています。そのため、全ての成果はMAHSのウェブサイトから誰でも自由に閲覧・ダウンロードすることができます。また、ウェブサイトには、海域アジアの文化遺産への関心を高めるさまざまなツール(3Dモデル、3D歴史年表、バーチャルライブラリーなど)が提供されていますので、研究はもちろんのこと、学校教育や文化観光など幅広い目的に利用できます。
フィールドチームの能力向上と地域に根ざした遺産ドキュメンテーションを促進するため、フィールドチームは、現場に配置される前に広範な事前研修を受けます。研修では、フィールド調査を行うために必要な知識・スキルの習得やプロトコールの確認を行います。また、プロジェクトの期間中でも、必要に応じて研修が実施されるとともに、プロジェクトリーダーや京都研究室チームの技術スタッフから適宜アドバイスが与えられます。
MAHSではフィールドチームの能力向上と現地社会との円滑な連携に資するため事前の研修を重視しています。
調査にあたっては、まず、国や地域から調査許可を得ることから始まります。調査は地域社会の合意を原則とします。許可が得られたら、調査対象地域を決定し、調査を開始します。
調査者は、調査記録シートに場所、日付、記録者名、GPS座標、遺跡/遺物の簡単な説明、状態、脆弱性、メモを記入します。遺跡や遺物の写真撮影は、写真測量への応用を想定し、標準的な方法で行われます。重要な歴史的建造物や遺跡は、地上設置型LiDARで対象物を3Dスキャンします。それにより、レンダリングと高解像度の三次元モデルの作成が可能になります。また、小型ドローンを使った空中写真や空中LiDARから得られたデータは、遺跡の周辺環境を理解するのに役立ちます。地表に散在する陶磁器などのサンプルを記録し、遺跡年代の特定に役立てることもあります。さらに、現地で未確認の資料が見つかった場合は、地域住民の許可を得た上で、撮影を行い、デジタル記録を作成します。
MAHSフィールドチームは、調査で記録された遺跡、建物、遺物をより深く理解するために、地域住民にインタビューを行い、遺産にまつわるストーリー、記憶、知識を収集しています。オーラルヒストリーは、事前の文献調査の成果を補うものであり、文字資料が残されていない遺跡や遺物に関して、時に有用な情報を提供してくれます。収録された映像はMAHSのオンライン・アーカイブ内のオーラルヒストリーのセクションから閲覧することができます。 https://maritimeasiaheritage.cseas.kyoto-u.ac.jp/data/database/oral-histories/
フィールドで取得されたメタデータは、データラングラーによって内容の確認と検証が行われます。その後、遺物や遺跡といったユニット毎に識別番号が割り当てられ、メタデータが作成されます。また、画像データには、著作権の保護を目的としてウォーターマーク(透かしのロゴ)を入れます。一連の作業は、データ追跡用シートに記録され、京都研究室のフィールド調査担当者が進捗状況や記入漏れを確認します。全ての作業が終了したら、クラウド上にデータを保存し、京都研究室とデータが共有されます。
京都デジタルドキュメンテーション研究室(京都研究室)では現在、9名のスタッフが働いています。国籍はアメリカ、インドネシア、オーストラリア、日本、ハンガリー、フィリピン、ポーランド、ルーマニアと大変国際色豊かです。京都研究室のメンバーは、歴史、考古学、デジタル遺産、遺産マネジメント、プロジェクトマネジメントなど各分野のスペシャリストで構成されたダイナミックなチームです。時には、スタッフ同士で国の郷土料理を振舞うこともあり、普段は食べることがない料理を楽しむことができます。
MAHSのデータベースは、文化遺産データ管理のために開発されたOSSプラットフォームの「Arches」を利用しています。データベースが構築された後は、実際にデータベースを運用し、仕様通り作動するかテストを重ね、実際の業務に耐え得るようシステムを調整します。MAHSでは大容量のデータを扱っており、日々の管理と点検が欠かせません。また、データ保全の観点から、定期的にバックアップを作成し、京都大学とオックスフォード大学の図書館で保管しています。
https://maritimeasiaheritage.cseas.kyoto-u.ac.jp/data/database/
MAHSは「Appsheets」と呼ばれるデジタル化された調査記録票を使用しています。Appsheetsを使うことで、複数の国からのフィールドデータの入力が標準化され、プロセスを最適化することができます。また、デジタル化された記録票は、紙ベースの記録票と比べて、移動の多いフィールド調査において持ち運びが容易であること、さらに、紙が高価な地域では、デジタル化された記録票の方が合理的であると言えます。入力されたデータは、MAHSプロジェクト全体で同期され、京都研究室でのデータ処理を経てオンライン・アーカイブへとアップロードされます。
現地調査に先立ち、MAHSは「フィールドブック」を作成しています。フィールドブックには、フィールド調査を円滑に進められるよう、調査地の概要、病院の電話番号、フェリーの時刻表といった実生活に必要な情報に加えて、調査対象となる遺跡や歴史的建造物に関するデータや文献が写真付きで提供されます。フィールドブックの作成にあたり、該当する文献や過去の調査報告書を調べるとともに、現地の歴史研究者に協力をお願いしています。
ドローンで撮影された空中写真は、調査地域の状況や遺跡の分布を詳細に把握することができるため、新たな調査対象の選定にも使われます。MAHSの撮影では、DJI Phantom 4 Pro V2とDJI Matrice 300 RTKという2種類のドローンが使われています。Phantom 4 にはRGBカメラと呼ばれる一般的なデジタルカメラが撮影に使われます。一方、Matrice 300はより重い機材を搭載することができるため、RGBカメラだけでなく、LiDARスキャナーを搭載して、3次元測量を行うことができます。撮影の手順として、最初に空中写真などを参考にして撮影したい対象またはエリアを決定します。次に、RTK-GPS基地局を使用して撮影したい範囲の座標を特定し、適用範囲を確認します。ドローンで空中写真を撮影した後、地表面が真上から見た均一な状態になるようオルソ補正(中心投影された写真を、正射投影に補正すること)をします。そのような処理を加えることで、Googleマップで見るような歪みのない空中写真の画像を作ることができます。また、LiDARで撮影した画像をコンピューターで解析することで、ジャングルに覆われていた地表面が明らかになり、新たな遺跡の発見につなげることができます。
フォトグラメトリとは、ドローンやデジタルカメラで撮影した写真を、コンピューターで解析・統合し、立体的な3Dモデルを作成する手法です。MAHSでは完成した3DモデルをSketchfabのMAHSアカウント上で公開しています。
https://sketchfab.com/MaritimeAsiaHeritageSurvey
フォトグラメトリは3Dスキャナのような特殊な機器が不要で、一般的なデジタルカメラを使用します。3Dモデルは、遺跡や建物を様々な角度から、より多くの写真を撮影することで精度が高まります。また、フォトグラメトリは、3Dだけでなく2Dに変換することもできるので、構造図をCADで図面復元し、それを元に建物の修復を行うことが可能となります。
プロジェクトの進捗管理は、プロジェクトマネジャーが担当しており、調査計画の立案、モニタリング、及び予算管理を行なっています。プロジェクトマネージャーは、現地のプロジェクトコーディネーターを通してフィールド調査メンバーへ作業指示を行います。調査実施における進捗を確認し、発生した問題・課題があれば、プロジェクトリーダーに報告し、解決するために必要な折衝を行います。
アウトリーチとは、プロジェクトの活動や研究成果をわかりやすく広く一般に伝える活動のことです。MAHSはFacebook、ツイッターなどのソーシャルメディアを活用して、現地調査の様子や講演会に関する最新情報をお届けしています。また、ブログでは、海域アジアで展開されている関連分野の研究プロジェクトや最新刊行物の紹介を行なっています。
さらに、「Locating Maritime Heritage in Asia」と題したシンポジウムを2023年2月にシンガポールで開催しました。こちらの成果物は、ドキュメンタリーフィルムやポッドキャストにまとめられ、今後MAHSのウェブサイトで公開される予定です。興味のある方はぜひご覧ください。
MAHSは自らの調査データ以外にも、海域アジアで行われたプロジェクトや提携機関が保有するデータを共有して、MAHSのデータベースに統合することで、他のデータセットへのアクセスの向上に取り組んでいます。ここでは、オックスフォード大学アシュモレアン博物館カーズウェルコレクション、モルディブ国立博物館、モルティブ国立公文書館、国立民族学博物館、アチェ・ジオハザード調査プロジェクト、チャオタン沈没船プロジェクトのデータが検索できます。https://maritimeasiaheritage.cseas.kyoto-u.ac.jp/data/
朝食とフィールド調査準備。カメラやドローンなどの装備を確認します。
6:00AM調査地へ移動。ベースキャンプの島と調査地の島の移動が20-30分ほどあります。調査地の島にご当地グルメがある場合は、朝食をその島で食べることもあります。
フィールド調査。午前のフィールド調査の時間は、昼の祈りの時間によって決まります。
8:00-11:30AM昼の祈り、昼食。
12:00-2:00PMフィールド調査。午後3時〜3時半頃に午後の祈りがあるため、短い休憩があります。フィールドワークの終了時間は、天気によって決まります。特にモンスーンの時期は風や雨が強いため、ベースキャンプに帰るための船が出る時間に合わせて、フィールドワークを終了します。
1:30-4:30PM移動。
4:30-5:00PM自由時間。チームメンバーは、夕焼けを眺めながら海岸を散歩したり、海で泳いだり、魚釣りをしたりと思い思いの時間を楽しみます。また、村の長老と話をしたり、ローカル文化を見て回ることも楽しみの一つです。
5:00-6:00PM夕方の祈り
6:00-PM夜の祈り、夕食。夕食では、魚釣りで捕まえた魚やタコをBBQにして食べることもあります。
8:00-9:00PM仕事。フィールド調査で収集したデータをパソコンへインポートし、翌朝データラングラーに受け渡します。その他の作業として、次の日の交通手段や船の運行時間を確認します。
9:00-11:00PM就寝。
11:00-12:00PMコーヒータイム。チームにはコーヒー好きが多いので、コーヒー豆を挽き、30分ほどかけてコーヒーを準備します。コーヒーはフィールドにも持っていくため、たくさん用意します。
5:00AM朝食。調査地によって朝食の内容が変わります。ご飯料理が一般的ですが、場所によってはパンやビスケット、バナナ料理なども食べます。
7:00AMフィールド調査。午前のフィールド調査の時間は、昼の祈りの時間によって決まります。
8:00-11:30AM昼の祈り、昼食。
12:00-1:00PMフィールド調査。午後3時〜3時半頃に午後の祈りの時間がありますが、場所によってはお祈りをすることが難しいため、その場合は夕方の祈りの時間にまとめて行います。
1:00-5:00PM自由時間。チームメンバーは、夕焼けを眺めながら散歩をしたり、海で泳いだり、サッカーをしたりして自由時間を過ごします。
夕方の祈り、業務連絡と翌日のフィールド調査準備。
6:00-8:00PM夜の祈り、夕食
8:00-9:00PM仕事。フィールド調査で収集したデータをパソコンへインポートし、翌朝データラングラーに受け渡します。また、インドネシアでは、国内で時差が3つあるため、この時間帯を利用して家族や友人と連絡を取ります。
9:00-11:00PM就寝。
11:00-12:00PMMAHSの目的は、中国沿岸からアラビア半島に至る長い海のつながりを持つ南アジアの歴史に焦点を当てた新しいタイプのオンラインアーカイブを作ることです。広大で多様な海の世界は、何世紀にもわたって商業や文化循環の舞台となってきましたが、破壊行為や無秩序な開発、気候変動など、さまざまな人的・環境的脅威により、過去の物質的痕跡は、今日文字通り目の前から消え去りつつあります。私たちは、こうした文化交流の歴史を研究者や地域コミュニティ、NGO、政府機関の人々が何世代にもわたって利用できるよう活動しています。
この目標に向けて、MAHSは、地域全体の歴史的・考古学的遺跡のデジタルドキュメンテーションに取り組んでいます。現地調査チームによる踏査や記録を含む伝統的な遺跡分布調査と、RTK/GPS、写真測量、IIIFを用いた高精細な画像撮影、地上・空中LiDARなどの最先端技術を組み合わせた方法によって、遺跡の詳細地図、建築図面、ビデオ、インタラクティブな3Dモデルを作成しています。これらのデータはオンラインアーカイブに統合され、京都大学、オックスフォード大学、そしてプロジェクトが対象とする各国の国立図書館で長期的に保存されます。また、すべてのデータはオープンアクセスで、誰でも自由に利用できます。
MAHSはモルディブ共和国での調査から始まりました。モルディブの歴史と文化を体系的に記録する同国で初めての試みです。モルディブの島々をくまなく訪れ、遺跡や博物館の収蔵品をマッピングし、カタログ化するという包括的な調査を計画しました。モルディブにある1192の島のうち約85%が無人島のため、調査の多くは、現地調査チームが舟を使ったり、泳いだりして島に上陸し、ドローンを飛ばして島をマッピングした後に、陸地を歩いて、かつて人が住んでいた痕跡を探し、記録します。そうすることで、どの島に人が住んでいて、放棄されたのかを特定するだけでなく、古代のモスク跡や墓地、イスラム教以前の祭祀場などの遺跡を発見することもできました。
考古学や歴史研究の伝統が長い国では、より的を絞った調査手順を採用しています。例えばインドネシアでは、まず図書館やインターネットで調査を行い、これまで見落とされていた地域や、体系的に記録されていない既知の遺跡がある地域などを特定します。そして、県や郡レベルの役所に勤める現地協力者と相談してターゲットとなる遺跡リストを作成し、現地調査チームがその地域に滞在しているあいだ、可能な限り、現地調査チームから1~2人と現地協力者が共同で踏査を行います。こうしたオフィシャルなつながりだけでなく、地域コミュニティと協力して、小道の整備や草木の除去などの後方支援も行っています。最も重要なのは、調査地の各村でミーティングを開き、プロジェクト紹介、意見、提案、助言を求めることです。また、現地調査記録の背景情報として、住民の同意を得てオーラルヒストリーを記録したビデオを作成し、データベースに登録しています。このように、現地の声を聞き、掬い上げることで、住民たちは、彼らが生活し、働いている場所で、文化遺産に対する考えや懸念を表明する機会を得ることができるのです。
私たちのプロジェクトは、幅広い用途に活用できるオープンアクセスのオンラインアーカイブを作ることを目標としています。歴史学者を中心とした学術研究プロジェクトであるため、海域アジアの歴史や文化に関する研究利用を第一に考えています。このプロジェクトの期間中、すでに世界中の多くの研究者の方によって、タカラガイ貿易の世界史やインド洋考古学、ペルシャのスーフィー碑文やイスラム教の伝統の近代改革といったテーマで、本や論文にMAHSのデータを利用していただいており、大変嬉しく思います。
しかし、学術研究以上に、プロジェクトのデータセットは、現地調査チームがあらゆる機材を駆使して収集した情報の有用性を最大限に引き出すように設計されています。そのため、考古学的な現地調査の枠を超え、オーラルヒストリーのビデオ映像や写本のデジタル化、建物の平面図や立面図、詳細なCAD図面の作成、オルソマップや3Dモデルのための空間データの取得、過去の被害や現在の状況、将来の脅威に関するメモなど、さまざまな情報収集を行っています。これらのデータは、保存、遺産管理、災害軽減、観光、教育など、アカデミックな分野以外でもすぐに活用できるものです。後世の研究者にしっかりとした歴史的記録を提供するだけでなく、今日の地域コミュニティ、文化機関、NGO、政府機関などに、より身近なデータとして活用されることを願っています。
グローバル化が進む現代においても、地球上のある地域は、他の地域よりもはるかに深くつながっています。その結果、遠隔地やアクセス困難な場所での知識生産や信頼できる研究資料の作成が不足するという、複雑な副作用が生じています。現代の研究者の多くは、「フィールドワーク」というお馴染みのアプローチを採用していますが、その一方で、交通の便や特にインターネット接続がスムーズな場所を選んだり、よく知られた「専門家」に予めアポイントをとってインタビューを実施したり、フォローアップが容易で比較的アクセスの良い場所へ短期間訪問する、といった残念な選択をする傾向にあります。この類の仕事は、ここ数十年の間に社会科学の学術論文の生産性を大幅に向上させましたが、その代償として、インターネット接続外にある場所や、さらにその先にある場所を疎外する結果となりました。
MAHSは、21世紀の学問がこうした支配的傾向にあることに対抗するため、これまで体系的な調査が行われてこなかった地域や、短期間のフィールドワークによる快適な旅とは対極にある、消滅の危機に瀕した文化遺産を記録することに焦点を当てています。MAHSの現地調査チームは7名のフルタイムスタッフで構成され、1年のうち最大10カ月間、島から島へと移動する旅人的なワークライフを送っています。そのため、4~6週間ごとにベースキャンプを移動し、新しい地域を調査する必要があります。多くの地域は、ロジスティクスが複雑で、電力はごく限られ、インターネットのアクセスが悪い遠隔地です。しかし、現地調査チームはこうした地域での調査の訓練と経験を積んでいるため、一般的に見過ごされがちな多くの場所でデータを収集し、地域コミュニティと協力することができます。こうした研究を行う大きな理由は、もし私たちが行わなければ、他の誰が、研究を行うための意欲や経験のある人材と機材を集められるのか分からないからです。脆弱な生態系や限界集落には、多くの危機遺産が存在し、永遠に失われかねない状況にあります。
私は30年ほど前から、友人や同僚、家族を訪ねるために日本を訪問していました。しかし、2012年にCSEASで6ヶ月間のサバティカル休暇を取得する幸運に恵まれるまでは、ほとんどが1ヶ月未満の短い旅行でした。当時執筆中だった本を完成させるために充実した環境を提供してもらい、一緒に仕事をする素晴らしい仲間との出会いもあり、私にとってはかけがえのない経験となりました。また、京都を新たに知るチャンスに恵まれ、すぐに京都が居心地の良い場所であることに気づきました。私はアジア、中東、ヨーロッパなど、海外の多くの国で生活し、仕事をした経験がありますが、京都は、単に興味深い「外国」の都市にいることを楽しむだけでなく、本当にわが家に帰ったような感覚を与えてくれることに驚きました。そのため、数年前にCSEASの募集告知を見た時、迷わずこのポジションに応募することに決めました。採用が決まると、それまで拠点としていたイギリスのオックスフォードから、家族で移住の準備を始めました。私たちは2020年3月中旬に到着しましたが、それは幸運にもCOVID-19パンデミックで全てがロックダウンする直前でした。
私の故郷である大西洋に面したマサチューセッツ州セイラムは、かつてアメリカの商業と文化の中心地であり、アジアとの海上貿易の基盤が築かれた港でした。セイラムの船は、スマトラ島西岸に定期的に寄港していたのです。私は子供の頃、遠くスマトラ島やインドネシアの港へ航海する話を読むのが大好きで、自分もそんな旅をしてみたいと夢見ていました。そのため、アメリカでの学部留学中に、多くのインドネシア人学生や、刺激的なインドネシア人の教授に出会えたことは幸運でした。インドネシア人のコミュニティは私を歓迎し、学部を卒業した後にインドネシア旅行を実現する手助けをしてくれました。それ以来、私はインドネシア諸島のさまざまな場所に戻り続け、さらにその先には、この島々が長い時間をかけてつながってきたアラブ諸国、モルディブ、インド、中国といった多くの場所を探索する旅をしています。
インドネシアの宗教と法律をテーマにした大学院での研究は、インドネシア人や彼らのコミュニティとの関係を数十年にわたり深め続ける人生を築くのに役立ちました。この間、私はさまざまな言語や学問分野を学ぶ機会を得て、より複雑な研究課題、さらにはインドネシアの遠隔地を探索する機会を得ることができました。こうした研究はすべて、私とインドネシアとの密接なつながりと、この素晴らしい群島の歴史と文化について、より深くそのつながりを学びたいという願いから続いています。