「メコン地域の移民労働者と開発」のセッションでは、4報告とそれに対するコメント、質疑応答が行われた。矢倉報告「Myanmar workers’ motivation to develop skills at Thai garment factories: Effects of perception of a firm’s human resource management practices」では、タイの縫製業を対象に、そこで働くミャンマー人労働者が短期的な雇用契約ゆえに技術向上意欲が低くなっていることを示した。水野報告「Labour Migration and Reallocation of Apparel Production between Thailand and Myanmar」では、タイの隣国での縫製業の発展がみられるなか、タイの縫製業が引き続きミャンマー人労働者に頼りつつも、付加価値の高い製品や織物産業の発展など産業の高度化を遂げていることを指摘した。日下部報告「Women migrant workers in enclaves: Special Economic Zones in the Mekong Region」では、このような縫製業企業が多く立地するメコン地域の経済特区を分析対象とし、労働者の権利が制限されていたり、低賃金労働や彼らの子どもが学校に行けない事例がみられる一方、ミャンマー人労働者が多く働くメーソットのようにコミュニティーが強いところでは社会サービスへのアクセスが容易となっていることを指摘した。そして、プレムジャイ報告「Cultural factor of labour mobility between Thailand and neighbouring countries」では、ラオス・ミャンマーからの労働者がタイ語を習得することでより大きな機会を得ていること、文化的な交流がタイ人コミュニティーとの理解を促進していることが紹介された。これらを受けて、初鹿野は「人びとを中心として移民労働者の労働環境を考えていくこと、国境を越えた動きと国内の動きとを連続的にとらえていくことである」等とコメントした。フロアからは、「経済特区での労働者の男女間での抱える問題の違い」「経済特区と工業地域の違い」「移民労働と結婚」「タイ社会の側の移民労働者受け入れのポジティブな側面」等に関する質疑応答があった。
Convenor and Chair: Kenjiro Yagura (Hannan University)
Panelists:
1. Myanmar Workers of Thai Garment Factories: Their Perception of Human Resource Management Practices and Its Effect on Motivation to Develop Skills and Difficulties in Teamwork Kenjiro Yagura (Hannan University)
2. Production Migration to Labor-sending Countries, and Upgrading of the Thai Garment Industry Atsuko Mizuno (Kyushu University)
3. Migrant Workers in Special Economic Zones in the Mekong Region: A Gender Analysis Kyoko Kusakabe (Asian Institute of Technology)
4. Cultural Factor of Labor Mobility between Thailand and Neighboring Countries Premjai Vungsiriphisal (Chulalongkorn University)
Discussant: Naomi Hatsukano (Japan External Trade Organization)