所属部門:政治経済相関研究部門
職 名:連携研究員
専門分野:
E-Mail:kawamura[at]cseas.kyoto-u.ac.jp
個人WEBページ:
研究概要:
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多民族国家インドネシアで人口が最も多いジャワ族の社会は、核家族が唯一重要な親族関係の単位で、二者関係が主体で、世帯を貫通して永続する日本の「いえ」のような組織を生み出さないという見方が主流である。
そのような従来の研究動向に相反して、近年のジャワ社会では、現代ジャワ語で子孫・血統・家系などの意味を持つトラーtrahと呼ばれる親族ネットワークの存在が確認されるようになった。
本研究はそのトラーの重要性を主張するものである。本研究はトラーの重要性を、ジャワの伝統産業であるバティック(ジャワ更紗)産業に関連づけて明らかにする。20世紀中頃に最盛期を迎えた地場伝統産業の発展と衰退の歴史に結びつけることで、トラーを近年の一時的な現象としてではなく、ジャワ社会に昔から存在した親族ネットワークとしてとらえ、そのダイナミズムを解明する。
主な調査地はジョグジャカルタ特別州プラウィロタマンである。同地は20世紀初頭から伝統的なバティック産地で、代表的な5つのトラーが存在する。そのメンバーは地域の経済活動の中心的な役割を果たし、バティック業のネットワークと親族間の婚姻関係を通じて、ジョグジャカルタ以外の地域にもメンバーを増やしてきた。またバティック産業協同組合の発展の歴史にも深く関わっている。プラウィロタマン地域の事例からは、生得的な血縁関係や婚姻の他に、経済活動の発展とともに拡大するトラーの存在と役割を指摘することができる。
上記の研究を通じて、最終的にはジャワ社会の新しい見方や枠組みを提示することができる。