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第13回ゾミア研究会 :「水のゾミア」特集

2016/07/16 @ 1:30 PM - 5:15 PM

日時: 2016年7月16日(土)1:30pm~5:15pm
場所: 京都大学東南アジア研究所 稲盛財団記念館2階 201号室「東南亭」

プログラム
13:30-15:15
「海のゾミア:南西カリマンタン海岸部の移民集団と国家」
太田淳(慶應義塾大学准教授)

15:30-17:15
「水路・陸路・空路で編む社会空間:現代のボルネオ内陸部社会における生活戦略の考察」
佐久間香子(京都大学東南アジア研究所連携研究員)

コメンテーター: 加藤剛(京都大学名誉教授)

要旨:
太田淳 「海のゾミア:南西カリマンタン海岸部の移民集団と国家」

スコットのゾミア論が海岸部を敢えて扱わなかったことはよく知られているが、本報告では東南アジア海岸部にも興味深い支配関係が存在したことを、南西カリマンタンを事例に論じる。南西カリマンタンでは1760年代から、東南アジア各地から来るマレー人、ブギス人、イラヌン人などの移民が多く定住するようになった。彼らは貿易や海産物の収集に従事する一方で、海上の戦闘に長け、海賊行為をはたらいたり航路の通行料を徴収したりした。現地国家は通常彼らを歓迎し、定住地や免税特権を与える一方で、王が組織する海賊集団への参加や戦時における軍事力提供を求めた。移民集団はこのような特権的地位を保ち、国家の支配体制に完全に組み込まれることはなく、しばしば協力する国家を変えるなど、自律的な地位を保った。1770年代からは、自立して国家を設立する移民集団も現れた。南西カリマンタンの貿易中心地スカダナが1786年にオランダ東インド会社によって制圧された後は、移民集団の活動がさらに活発化し、地域の貿易にも重要な役割を果たした。ところが1820年代から次第にオランダ植民地政庁の支配が進むにつれ、移民集団は定住地や生業を変えるなどして、海洋移民的な性格を失っていった。

太田淳(おおた あつし)
1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部准教授。著 書にRegime Changes and Local Dynamics in West Java: Society, State, and the Outer World of Banten, 1750-1830 (Boston and Leiden: Brill, 2006) がある。

 

佐久間香子 「水路・陸路・空路で編む社会空間:現代のボルネオ内陸部社会における生活戦略の考察」

発表者の調査地であるボルネオ内陸部のロングハウス・コミュニティは、村落人口の都市への流出(就労、就学、婚出など)に加えて、観光産業への従事のためにできあがった森の中の新集落への人口流出を経験してきた。その背景には、19世紀後半以降、村人がロングハウスより上流域の洞窟において盛んにツバメの巣を採集していた洞窟群一帯が、1974年に国立公園に指定され、2000年には、マレーシアで初めての世界自然遺産に登録された経緯がある。この国立公園での観光産業で生きていく選択をした村人が、ロングハウスをでて国立公園周辺に家屋を建てはじめたことで、ロングハウス出身者を母体とする新集落が形成されたのである。この間、ロングハウスや新集落の人びとの生活世界の中に、かつての主要な移動・物流手段として水路、商業伐採を機に網目状に広がった陸路に加えて、観光客の利便性の向上を目的として整備された空路が、身近なもうひとつの移動・物流手段として立ち現れることによって、都市は遠い存在ではなくなり生活の一部に組み込まれた。
 本発表では、国立公園の世界遺産登録後におきた新集落の急速な拡大過程を、人びとの居住形態と生業に注目して分析することで、水路、陸路、空路の3つの回路をつかって都市と森を行き交う現代のロングハウス・コミュニティの生活戦略を考察する。 

佐久間香子(さくま きょうこ)
京都大学東南アジア研究所連携研究員。専門は文化人類学。主要論考に『中央ボルネオにおける内陸交易拠点の歴史的形成と変化』(博士学位論文、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、2015)、がある。

 

Zomia Study Group contacts: Koichi Fujita, Hisashi Shimojo, Mio Horie

詳細

日付:
2016/07/16
時間:
1:30 PM - 5:15 PM
イベントカテゴリー:

主催者

Shimojo Hisashi