研究代表者:林田 秀樹(同志社大学・人文科学研究所)
共同研究者:岡本 正明(京都大学・東南アジア研究所)
甲山 治(京都大学・東南アジア研究所)
神崎 護(京都大学・大学院農学研究科)
生方史数(岡山大学・大学院環境生命科学研究科)
北村 由美(京都大学・附属図書館)
加藤 剛(京都大学・アジア・アフリカ地域研究研究科)
Syarif Ibrahim Alqadrie(タンジュンプラ大学・社会科学政治学部)
Erdi Abidin(タンジュンプラ大学・社会科学政治学部)
実施期間:2014-2015
研究概要:
1980 年代以降、インドネシア・西カリマンタン州において国営・民営企業が主導してきた産業造林・アブラヤシ農園開発が、近年、現地の自然と社会経済に様々な影響を及ぼしている。急激な森林減少による植生変化と温室効果ガス増加が懸念され、小農や華人事業家等小規模主体の当該事業への新規参入により現地住民の社会・経済生活が大きく変容を遂げているのである。本研究では、こうした現象の具体的な発生態様とメカニズムを解明するためのフィールド調査を、現地研究者、及びその関係者の協力を得て実施する。
詳細:
本研究の目的は、調査地において、小農等の行動に作用する社会経済的要因が大気・植生という自然環境をいかに変化させているか、その社会経済的諸要因の間でいかなるメカニズムが働き、地域の社会経済そのものが変化しているかについて、学際的なアプローチで調査に取組むことである。具体的には、以下の2つの課題を遂行する。
- 産業用樹種及びアブラヤシの植栽とそれに伴う森林減少が、現地の植生と大気中の温室効果ガス賦存に与える影響の観察・計測
- 小農、及び他部門小規模事業者(とりわけ華人事業家)による当該部門参入を促している主体的動機と客観的条件、並びにその参入が調査地の社会経済に及ぼしている影響の解明
なお本研究は、当地で調査を継続中の自然科学分野(神崎、甲山)・社会科学分野(林田他)の2 つの研究グループが、それぞれの特性を生かして相乗的に調査・成果公表を行おうとする総合性を特徴としている。加えて、2 名の現地研究者をメンバーに迎え、当地での調査の進展について能う限り万全の態勢を布き目的達成を目指す。
産業造林・アブラヤシ農園の開発は、近年インドネシアの外島部全域において急激に進展してきた現象である。そして西カリマンタン州は、現在、同国の中でもそれらの開発が最も急激に進展している代表的なフロンティアであり、最先進地の1 つである。同州の事例を集中的に調査研究することで、同様の現象が、外島部各地で現在どのように顕現しているかについて比較し、国全体として将来どのような傾向をたどるかについて類推する際の基準となる重要なモデルを得ることができる。この点にこそ、本研究の意義がある。