研究代表者:Kurniawati Hastuti Dewi(インドネシア科学院・政治研究所)
実施期間:2014-2015
刊行物の内容:
本研究は、現代インドネシアの地方政治におけるジャワ人ムスリム女性政治指導者の登場とその成功の背景要因を分析するものである。具体的には、イスラーム、ジェンダー、ネットワークが彼女たちの成功に果たした役割を分析する。ジャワにおける支配的な宗教組織であるNahdlatul Ulama(NU)のスタンスに典型的に見られるように、ローカルレベルでは女性指導者がイスラーム的に許容されており、そのことがジャワ人のムスリム女性たちが政治的指導者となる宗教的基盤となっている。そして、こうした女性たちは、政治キャンペーンにおいては、彼らのジェンダーに適った敬虔なムスリムとしての思想と実践を通じて宗教的・政治的支持を獲得し、女性からだけでなく、男性からも政治的な支援を勝ち得ている。ただし、こうしたジャワ人ムスリム女性指導者が現れたとしても、その自治体でジェンダーの視点を踏まえた政策が導入される補償はないことも本研究では明らかにしている。
詳細:
インドネシアの地方政治においてムスリム女性指導者の台頭と成功を支えた要員に関する包括的な研究はこれまで行われてきておらず、本研究が初めてのそうした研究となる。本研究は、ポスト・スハルト期の地方政治においてジャワ人ムスリム女性が台頭した背景にはイスラーム、ジェンダー、ネットワーク、そして一定程度はファミリーネットワークが重要であることを初めて示した。また、本研究はまた、ジェンダーの視点により政治現象を分析する新しい視角を東南アジア政治研究に導入する。ジェンダーの視点を踏まえた東南アジア政治の研究の重要性は90 年代から主張されており、本研究もその流れに位置づけることができる。