カンボジアにおけるポル・ポト政権期後の基礎教育再建の文脈に関する研究 ──教師と学校教育の社会的背景と位置づけに着目して──

研究代表者:千田 沙也加(名古屋大学・大学院教育発達科学研究科)

実施期間:2014-2015

  
研究概要:

カンボジアの中学校教員養成校

カンボジアの中学校教員養成校

  本研究は、多くの教師を失い、学校教育の空白の時代であったポル・ポト政権期(1975〜79 年)後の基礎教育がどのように再建したのか、その文脈として社会的背景と位置づけを明らかにすることを目的とする。本研究目的を明らかにするため、東南アジア研究所図書室における1980 年代カンボジアの政治・社会・文化に関わる図書、およびマイクロ資料である当時の新聞『カンプチア』の検討を行う。図書室は主に8 月に集中的に利用し資料を集め、その後必要に応じて追加利用をする。

 
 
 
 
 
 
詳細:

カンボジアの小学校教員養成校

カンボジアの小学校教員養成校

 本研究は、ポル・ポト政権期の後にあたるヘン・サムリン政権期(1979~89 年)の基礎教育再建において、いかなる社会的文脈があったのかを明らかにすることを目的とある。申請者は博士論文の研究として、同時期の基礎教育の再建が、だれによって、どのように行われたのか明らかにすることを課題とし、教師および元教師たちに対する聞き取り調査から、生きられた歴史としての教育史を再考している。それに関連して本研究では、同時期の教師たちが社会的にどのような立場にあったのか、またどのような生活をしていたのかを明らかにするとともに、基礎教育課程の学校教育が社会的にどのように価値づけられ、いかなる意味があったのか明らかにする。

カンボジアの学校教育史を扱った国内外の研究は少ない。それは、ポル・ポト政権期という国際社会から隔離されていた時代と、続くヘン・サムリン政権期では西側諸国によるカンボジア研究が禁止されていたという背景がある。現在のカンボジアの教育の基礎ともいえる、ポル・ポト政権期後の教育再建の意味を、教育政策のみならず、教師と学校教育の社会的文脈に着目して明らかにすることは、学校教育史研究の空白を埋める意義に加え、カンボジアに固有の教育のありかたに迫る意義があるといえる。

本研究はまた、史的な理解としてだけでなく、現在のカンボジアの教師たちの思想と行動および教育現場に根付いている固有の特性を理解する上でも重要である。これは、地域に根差した国際教育協力を行う上で必要な視点であるだけでなく、今後の教員養成のありかたや教師評価といった実践的な適用に結びつくと考えられる。

  
  

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