インドネシアにおける海南系華人のネットワーク構築に関する人類学的研究

研究代表者:横田 祥子(滋賀県立大学・人間文化学部)
共同研究者岡本 正明 (京都大学・東南アジア研究所)
      北村 由美(京都大学附属図書館・研究開発室)
      櫻田 涼子(育英短期大学・現代コミュニケーション学科)
      長沼 さやか(静岡大学・人文社会科学部)

実施期間:2014-2015

  
研究概要:

インドネシア・バンダアチェにある瓊州(海南)会館の扁額

インドネシア・バンダアチェにある瓊州(海南)会館の扁額

  本研究は、インドネシアにおける海南系華人のコミュニティおよびネットワークを明らかにすることを目的としている。中国海南島出身の華人は世界50 カ国に、約200万人が居住し、特にタイ・インドネシアに集中していると指摘されながら、インドネシア華人研究の豊富な研究蓄積においても、ほとんど明らかにされていない。そこで、インドネシア各地にて海南系華人コミュニティの調査を通じて、その基礎的資料を収集する必要がある。研究に当たっては、平成27年8〜10月にかけてジャカルタ連絡事務所に駐在する。

 
 
詳細:

1950 年代インドネシアから海南島へ「帰国」した華僑の身分証明書

1950 年代インドネシアから海南島へ「帰国」した華僑の身分証明書

  本研究は、インドネシア各地の海南系華人コミュニティの実態と東南アジア諸国、並びに中国海南省とのネットワークを明らかにすることを目的としている。

インドネシア華人研究においては、国籍選択の問題、華人文化の独自性・継承性、同化政策に関連したナショナル・アイデンティティ、財閥研究などが主題となってきた。これらの研究の多くは、在地化の進行したジャワ島華人を主たる研究対象としてきたため、華人内部のサブ・エスニシティは重要な検討課題となってこなかった。また、インドネシア華人のサブ・エスニシティについての学術的分類は、福建系、広東系、潮州系、客家系の4 分類に留まり、海南系華人は人口規模が大きいという指摘がある一方で、その実態はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、インドネシア在住の海南系華人の居住地域、社会組織、宗教、職業、教育、政治参加、移住史、第三国への再移住、海南省および東南アジア諸国とのネットワーク、エスニックグループ間関係(インドネシア華人他サブ・エスニックグループ、非華人)等の基礎的資料を収集する。研究方法は、①インドネシア各地および中国海南省での実地調査、②中国・シンガポール・マレーシアの華人研究者との情報交換を目的とした国内研究会の開催、の2 点を組み合わせる。研究方法①に関連して、ジャカルタ連絡事務所を拠点として調査を実施するとともに、インドネシア科学院、インドネシア大学等の学術機関と研究交流する必要がある。②については、中国、シンガポール、マレーシアにおける海南系華人をめぐる研究は、既に相当の蓄積があり、当該地域華人研究者との連携が必要である。
 研究の意義として、従来不足していた、インドネシアにおける海南系華人コミュニティの実態と中国海南省とのネットワークを明らかにすることが出来る。また、20 紀アジア領域内の冷戦構造の下で、中国海南省へ再移住したインドネシア帰国華僑の移住史を再構成することが出来る。

本研究により期待される成果は、①インドネシア内の海南系華人をめぐる基礎的資料の提供、②インドネシア華人のサブ・エスニシティ分類の再検討、③帰国華僑の海南島再移住の歴史、の3点が挙げられる。これら3 点の成果を通じて、海南系華人の移住史の一端を明らかにすることができる。

  
  

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