東南アジア交易史における「長期の19世紀」

研究代表者杉原 薫(東京大学・大学院経済学研究科・経済学部)
共同研究者:水野 広祐(京都大学・東南アジア研究所)
      川村 朋貴(富山大学・人文学部)
      太田 淳(広島大学・大学院文学研究科)
      西村 雄志(関西大学・経済学部)
      久末 亮一(日本貿易振興機構アジア経済研究所・新領域研究センター)
      柿崎 一郎(横浜市立大学・国際総合科学部)
      島田 竜登(東京大学・大学院人文社会系研究科)
      宮田 敏之(東京外国語大学・大学院総合国際学研究科)

実施期間:2011-2012年

 

研究概要:

18世紀末から20世紀初頭にかけての東南アジアでは、植民地化と世界経済への統合のなかで、域内交易が、他地域と比較しても注目すべきスピードで持続的に成長した。本研究会は、先行の萌芽研究(後述)の成果を受け継ぎ、独自の交易ネットワークや市場制度を発達させた域内交易の成長という視点から東南アジア交易史を捉えなおすことによって、「長期の19世紀」をまとまりとする新たな歴史像の提示を目的とする。

 

詳細:

出所および注:Prince of Wales of Island Gazette. ペナンの貿易は1806-1814年のあいだに、ナポレオン戦争のために大きく縮小し、戦後しだいに回復に向かった。この時期にペナン=マラッカ枢軸が形成されるとともに、ペナンはアジア地域間交易や東南アジア域内交易の成長を促進する役割を果たした。

出所および注:Prince of Wales of Island Gazette. ペナンの貿易は1806-1814年のあいだに、ナポレオン戦争のために大きく縮小し、戦後しだいに回復に向かった。この時期にペナン=マラッカ枢軸が形成されるとともに、ペナンはアジア地域間交易や東南アジア域内交易の成長を促進する役割を果たした。

われわれは、萌芽研究「東南アジア史における交易網と中継港の役割」(研究代表者 川村朋貴 2010年~ 2011年度)において、19世紀の東南アジアにおける域内交易の成長という仮説を提出し、これまで研究が遅れていた19世紀前半の域内交易を数量的に検討した。その結果を19世紀末以降の趨勢と合わせて考えると、「長期の19世紀」における域内交易の持続的成長という構図が浮かび上がってくる。本研究は、植民地化やアジア間貿易の発展だけからは説明しきれない、シンガポール、香港などの中継港をハブとする東南アジア域内交易の持続的成長を支えた独自の市場制度の存在、および商業ネットワークの性格とその変化を貿易統計、商品価格データ、記述史料から解明し、その意義を論じる。域内交易史の立場からのこのような総合化の試みは存在しないので、東南アジアが他地域では見られない市場制度を発達させたことが解明できれば、現在研究の焦点となっている制度分析の比較史的研究に貢献できると考えられる。

本研究の構成メンバーは、先行萌芽研究における資料の収集、検討を通じて密接な交流を持ってきた。本研究でもこれまでの研究会形式を継続するとともに、国際ワークショップの開催、国際会議または社会経済史学会でのパネルの組織などからもっとも有効な発信方法を選び、その後、英文または和文での論文集の刊行を目指す。個別論文の集積を超えた、インパクトのある共同研究が期待できる。

出所および注:Source: Straits Settlements Factory Records G/34/153. シンガポールは、1819年に建設されて以来、ペナンと並ぶ中継港として成長した。すでに1826年の段階で、東南アジア島嶼部から大量のアジア商船が来航し、東南アジアの域内交易を活性化していたことが窺える。

出所および注:Source: Straits Settlements Factory Records G/34/153. シンガポールは、1819年に建設されて以来、ペナンと並ぶ中継港として成長した。すでに1826年の段階で、東南アジア島嶼部から大量のアジア商船が来航し、東南アジアの域内交易を活性化していたことが窺える。

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