cseas nl75 所長挨拶

東南アジア地域研究研究所について

私たちの研究所は2017年1月に旧東南アジア研究所と旧地域研究統合情報センターが統合して一つの新しい研究所として再出発しました。

京都大学東南アジア地域研究研究所 図書室

 私たちの住む世界は、環境破壊、災害、人口の高齢化、紛争あるいは経済格差による貧困など多くの課題を抱えています。私たちはそれらの問題への理解を深め解決を提示できるように研究を目指しています。そのために分野を超えて学際的な研究を、現地の過去と現在のリアリティに根ざして進めています。多くの先人による知識や経験の蓄積を踏まえて東南アジア地域から更に広げて世界諸地域も含めて、地域社会へのコミットメントを強め、インパクトのある研究を進めたいと考えています。

 本研究所は、人文・社会系の人類学、歴史学、文学、政治学、経済学等の諸分野に加えて、理系の農学、林学、医学、工学あるいは情報学等の分野の研究者を擁しています。常勤スタッフ35名の中には、タイ、フィリピン、オーストラリア、イギリス、アメリカなどの多国籍の研究者がおります。若手および客員研究員を含めると70名ほどの大所帯になりますが、多彩な研究者が共通に持っているのはフィールドである地域に対する思いとそこに直接かかわる姿勢です。

バンコク連絡事務所(1963年設置)

 本研究所では、国内外の研究者の成果を発信するために英文・和文の学術誌、英文・和文の学術叢書を出版し、5カ国語の電子ジャーナルを発行しています。図書室は東南アジア諸語も含めて約25万冊の書籍を有しています。地図、画像、データベースなども多種保有しています。タイのバンコクおよびインドネシアのジャカルタに開設され今や50年にもなる連絡事務所もあります。調査のベースであるとともに現地の研究者やいろいろな方とのネットワークを広げ、維持するために機能しており、内外の研究者に利用して頂いております。

 現在、研究所で進めている大型プロジェクトとしては「日ASEAN協働による超学際生存基盤研究」があります。ここでは上述のような世界の諸問題、課題に対して研究者だけではなくASEAN諸国の行政やビジネス市民団体の代表等、様々な立場にある多国籍の人材を集めて、課題への解決を求めながら、豊かな社会、多元的な人間の共生が可能になるような社会の構想を目指して研究と実践を進めています。

 本研究所には、二つの共同利用共同研究拠点があります。東南アジア研究、地域研究に関わる国内の諸機関あるいは研究者そして国外も含めた研究者に対して私たちの研究の場を共同研究のために開いて様々な研究資源を提供しています。個々の研究者に、自身の関心にそって大小のプロジェクトを進めていただいています。

 また、東南アジア研究および地域研究にかかわる二つのコンソーシアム立上げと運営にかかわってきました。一つは「地域研究コンソーシアム」(JCAS)で、2004年に国内の地域研究にかかわる様々な研究者コミュニティや社会団体を中心として、今では100余りの組織が加盟して情報共有および交換の場として機能しています。本研究所は事務局として参加しています。もう一つはConsortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA)といって国際的な東南アジア研究をアジアにおいて盛んにする事を目指したコンソーシアムです。2013年に8カ国1地域の11機関が協力して始めました。情報共有やアジアからの東南アジア研究の発信を強化していこうという主旨です。この様に当研究所は国内外の地域研究および東南アジア研究の結節点の役割を果たしています。

 教育については、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科および医学研究科などで協力講座を持ち、大学院教育に協力しています。また、国内外から多くのポスドク研究員や若手の研究者たちを集め、ここで共同研究を進めています。1977年から毎年公開で東南アジアセミナーを開催してきました。2010年以降は東南アジア各国を巡回する形で各国の大学や研究機関の協力を得て、国際的に公募した若い大学院生やポスドク研究者を集め、毎年実施しています。

 社会連携活動としては、東南アジアに対する親しみや理解を持ってもらう事業も実施しています。なかでも2014年に開始したビジュアル・ドキュメンタリー・プロジェクトでは、東南アジア各国の若手映像作家の映像作品を毎年公募した中から選んだ作品を京都で、作り手の若手作家を招聘して上映し、交流の機会を持っています。開始以後、国際交流基金アジアセンターの協力も得て毎年、盛り上がりをみせており外部に向けてアピールする機会となっています。

 この様な活動や研究、知識と情報資源の共有を通じて私たちは持続可能な自然環境や多元的な社会共生を可能にする地球コミュニテイの形成を目指して、日々研究に邁進していきたいと考えています。

*本記事は、動画の発言を書き起こしたものです。

 

 

もう少し深く知りたい方への文献紹介