cseas nl75 特集3 年次報告会 IPCR

共同利用・共同研究拠点
「東南アジア研究の国際共同研究拠点」

東南アジア地域研究研究所は、共同利用・共同研究拠点として、「東南アジア研究の国際共同研究拠点」を実施している。その目的は、国内唯一の東南アジアを名称に冠する研究所として、国内外の東南アジア研究者コミュニティに研究所のリソースを提供し、活用してもらうことで、研究所を場とした共同利用・共同研究を推進することにある。具体的には、<タイプⅠ:海外連絡事務所を活用したフィールド滞在型研究>、<タイプⅡ:外国人客員制度を活用した拠点集中型研究>、<タイプⅢ:豊富な所蔵史資料を活用した資料共有型研究>、<タイプⅣ:近い将来のプロジェクト形成を目指す萌芽型研究>、<タイプⅤ:『地域研究叢書』の公募出版>、<タイプⅥ:若手育成のための個別研究>、<タイプⅦ:若手の国際発信力強化型研究>の7つの種類の共同研究を用意し、うち6つについて公募をおこない、外部者を含む委員会での審査を経て採択を決定している。

 2019年2月14日及び15日に、この拠点活動の平成29年度の年次研究成果報告会を稲盛財団記念館で行った。14日はタイプⅥの5件、16日はその他のタイプの共同研究計25件(うち終了課題13件、継続課題12件)について、その代表者が進捗と成果を報告した。人文社会系から自然科学系まで、史資料の共有化をめぐる基礎研究から社会貢献を射程に入れた実践的な研究まで、研究所の特徴である学際的な雰囲気のもと幅広い研究活動の概要が紹介された。

 15日の最後には、本研究所の岡本正明教授の司会のもと、田崎郁子(大東文化大学国際関係学部)、藤田渡(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科)、藤本穣彦(静岡大学農学部)、石川登(本研究所)の各氏が登壇し、本拠点の運営について意見を交わした。例年と同じく、一般の競争的資金より申請資格を幅広く設定し、海外連絡事務所や図書室、海外機関とのネットワークなど本研究所のリソースを広く開放している点には高い評価が集まった。一方で今年は、研究者への共同研究終了後のフォローアップ(国際学会での発表、論文による成果公開)への支援が将来の課題として取り上げられた。また、直接の関係者だけではなく、広く外部にも共同研究の参加者や聴衆を開く方法として、インターネット会議の活用などを通して活動の広報に一層の努力を求める意見もみられた。