cseas nl75 所長からのメッセージ

東南アジア地域研究研究所の近況

速水洋子(京都大学東南アジア地域研究研究所)

2020年度はコロナ禍で明け、そして暮れる一年となりました。この間私たちはいろいろなことに否応なく気づかされました。「グローバル化」と唱えごとの様に言ってきた世界のつながりが、こうまで実感されることもこれまでなかったと思います。そのなかで、調査に行けない一方で、研究室からネットでつないでできることも思いの外少なくないこと、しかし同時に、現地に赴かなければわからない人々のコロナ禍の日常の息遣いに手が届かないもどかしさも知りました。私たち自身の日常の人とのつながり方も再考・再編をせまられました。研究所としてお迎えする海外からの招聘研究者の足はぱたりとやみ、夏から秋にかけてはひっそりとしていました。

当研究所では、2020年春に一度目の緊急事態宣言が発令された頃から、東南アジア各国でこのコロナ禍がどの様に経験されているのか、私どもの現地ネットワークを通じて多くの貴重なレポートをお送りいただき、「コロナ・クロニクルズ」として本研究所のウェブページに掲載してきました(https://covid-19chronicles.cseas.kyoto-u.ac.jp/)。更にこれを契機に、12月には東南アジア学会と共催で、東南アジア諸国の第一線で活躍するジャーナリストとウェブでつないで、コロナ禍のもとでの報道についてシンポジウムを実施しました。また3月には、第44回を迎える東南アジアセミナーをオンラインにて開催、日本を含む各国の研究者や市民活動家により、医学、経済学、政治学、社会生活など様々な立場からの講演を伺い、国際公募した若いポスドク研究者を集め、ディスカッションをする予定です。

コロナ禍にありながらも嬉しい新任のメンバー到着もありました。まず3月末に緊急事態宣言発令で海外からの入国に対してシャットダウンする直前に、マイケル・フィーナ―教授がご家族共共オックスフォード大学から移動してこられ、夏には同教授による海域アジア文化遺産プロジェクトが開始されました。1月初めに再度の緊急事態宣言の寸前に、同プロジェクトのスタッフ一同も無事入国することができました。また、1月には新任の馬場特任助教が着任しました。このほか、緊急事態宣言の合間を縫うようにして、東棟の改修が完了しました。中庭の桜が良く見えるリサーチ・コモンズや、談話室、ユーティリティ・ルームやスタディー・ルームはいずれもオープンスペースとして様々に対話・打合せ、短期滞在の方のデスク・スペース等として使用することができます。自由な往来や対話ができるようになり、これらの部屋がフルに活用される日が待ち遠しいです。私たちの研究所は、図書資料や連絡事務所など、資源はいろいろありますが、最大のリソースは人のつながりです。オンラインのつながりが余儀なくされる中でもその有難さを思い知らされる一年でしたが、人と人とが顔を合わせて対話のできる日が一日も早く戻ることを願っております。今後とも、皆様の更なるご参加、ご協力とご支援をお願い申し上げます。