環境共生研究部門・助教
博士(工学、神戸大学)
専門分野はレーダー気象学
神戸大学を経て、2019年4月より助教を務めております。これまで日本国内を対象として気球や気象レーダーなどの観測を通じて雲内の雪や雨の数や大きさを調べ、豪雨災害をもたらす雲はどれくらいの潜在的な雨量をもっているのかについて着目してきました。2012年神戸市都賀川での水難事故では局地的に急激に雷雲が発生発達し、人的被害が出ました。そのような豪雨災害の危険性予測に役立てたいというのが、この研究に取り組むこととなったきっかけです。
CSEASでは多様な専門分野、国の方々と一緒に議論をしながら、社会や文化、人の暮らしなどと自然環境との関わりについて学んでいきたいと思っています。現在、インドネシアでの熱帯泥炭火災の防災に取り組んでいますが、この問題は雨が深く関係しています。私はインドネシア海洋大陸に特徴的な雨の1日の変化や、季節との関係について興味を持っています。暮らしのなかでの人々の季節の捉え方は、国や地域によっても異なるかもしれませんが、スマトラ島泥炭地域での雨の降り方や季節との関係について数値で理解したいと思っています。モンスーンや陸風・海風といった風の流れがどのように作用し雲が発生し、泥炭地にいつごろ雨をもたらすのか知りたいと思っています。逆にいえば、季節に応じて雨の降りにくい地域や時間帯を知ることになります。インドネシアではエルニーニョの年には雨が数ヶ月間降らないこともありますが、乾季でも雨は降ります。
防災気象情報のあり方についても着目しています。私は従来の衛星データと比較しながら、より細かな空間情報でほぼリアルタイムな雨量情報が期待できる気象レーダーを活用し、地中の乾燥度合いをより現実なものとして捉えられるのではと注目していますが、現地で行われているような、人が目で見て判断して連続無降水日数を看板で知らせるというシンプルな方法も併用するのが、農地への火入れやタバコのぽい捨て防止につながり、「監視の目」として重要なのかもしれません。また最近では、インドネシア気象庁の気象レーダーが煙霧を捉えたという事例もあります。観測データをどのように捉えて活用していくのか、住民や土地所有者、水を管理したり火災防災に取り組んでいる方々と一緒に考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
気象レーダーを設置しているスマトラ東部沿岸地域であるブンカリス島へ移動中のフェリーにて。