相関地域研究部門・日本学術振興会特別研究員PD
博士(学術、東京大学)
専門分野はカンボジア地域研究
研究テーマは近現代カンボジアの言論空間の生成と変容
私とカンボジアとのつながりは、東京外国語大学のカンボジア語専攻への入学から始まります。カンボジアについて学ぶ中で、カンボジアの歴史教育に関心を持ち、学部4年生の時に王立プノンペン大学人文社会学部史学科へ1年間交換留学しました。私がちょうど留学していた2009年から2010年というのは、ポル・ポト時代として知られ、ジェノサイドで国民の四分の一が亡くなった民主カンプチア時代の歴史認識をめぐる大きな動きが見られた時期でした。民主カンプチア時代に関する歴史書の副読本化、カンボジア特別法廷の第一事案(元ツールスレン政治犯収容所所長カン・ケ・イウ)の最初の判決が出され、カンボジア現代史上の悲劇をどのように社会の中で記憶するのかが問われていました。カンボジアにおける歴史認識の問題をより深く学ぼうと、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻へ進学し、カンボジアの歴史教育、歴史叙述をめぐる研究に取り組み、独立以降のカンボジアの歴史叙述の変遷に関する博士論文を執筆し、2020年3月に博士号を取得しました。
博士課程までの研究を通して、カンボジア近現代における在野知識人の言論活動が政府の対抗言説として重要である一方、彼らの言論活動に関する研究がほとんどなされていないことから、現在は近現代カンボジアの言論空間の生成と変容を研究しています。カンボジア国内外でのフィールドワークを通して、近現代カンボジアで発行された新聞・雑誌等の刊行物を可能な限り収集し、関係者へのインタビュー調査を実施することで、彼らの言論活動を明らかにするとともに、このような言論空間に対する政府の規制の変遷も明らかにしたいと考えています。
COVID-19の影響から、国外でのフィールドワークが難しい状況下での研究となりますが、まずは手持ちの資料と日本国内からアクセス可能な資料を用いて研究を進めたいと考えています。幸い、東南アジア地域研究研究所図書室には1970年代と1980年代のカンボジアの新聞マイクロ資料があるため、これらを存分に活用したいと思います。東南アジア地域研究研究所とは、共同利用・共同研究拠点のプロジェクトで博士課程時代から大変お世話になっており、この度研究所の一員として研究生活が送れることをとても嬉しく思っています。
(身分・肩書は2020年度のものです。)