cseas nl75 新任スタッフ紹介

中村朋美

社会共生研究部門・日本学術振興会特別研究員RPD
博士(人間・環境学、京都大学)
専門は中央アジア近代史、露清関係史

2021年4月に帯谷知可先生受入で日本学術振興会特別研究員RPDとして異動してきました。2016年に京都大学で人間・環境学の学位を取得した後、関西大学東西学術研究所に所属し、2019年から関西大学東アジア文化研究科受入で学振特別研究員RPDとしてのキャリアをスタートさせました。専門分野は中央アジア近代史、露清関係史で、18世紀から19世紀前半にかけてのロシア帝国が、中国や中央アジア、さらにはインドに対して抱いた商業的関心や貿易政策に関心を持っており、それらが何を対象にどのように形作られ、何を契機に変化したのかを文献資料をもとに研究しています。

学部生時代、小松久男先生の講義で中央アジアについて知ったことからウズベキスタンを旅し、ウズベク的、イスラーム的要素が、ロシア的というよりも、ソ連的な要素(もっともソ連期のロシアを訪れたことはありませんので、イメージにすぎません)と混在しつつも、別個のものとして存在している現地の状況に魅せられ、帝政期のロシア統治と現地社会の在り方について研究し始めました。その後、ウズベキスタン留学時に、レニングラード出身でソ連期にご夫君とともにタシュケントに移住したタタール人女性からロシア語の個人指導を受けたり、現地在住のロシア人やタタール人と交流したりするなかで、ロシアからの人の移動に関心を持つようになりました。また博士課程で松浦茂先生の研究指導を受けて18世紀の露清関係に関する知見を得て、ロシアと中央アジアだけではなく、中国との関係も視野に入れることで、従来別々に研究されてきた分野を相互に関連させる視座から研究しようと試みています。

広く知られていますように、ロシアは広大な領土を領有し、多民族を擁する国家であり、そこに至るまでには16世紀以来のロシアの拡大の歴史があります。拡大の背景には、勢力圏の拡大、資源の確保、文明の使命など様々な理由がありますが、私はアジアの産物に対する希求とアジア貿易の構築に着目し、その観点から19世紀半ばのロシアによる中央アジア征服、中国への攻勢に至る歴史を解明することを目指しています。

CSEASでは同研究所のデータベース「トルキスタン集成」を利用して研究を進めています。ただ、せっかくCSEASで研究する機会を得ましたので、19世紀前半のロシアが東南アジアに向けた商業的関心についても研究を進めたいという野望を抱いています。どうぞよろしくお願いいたします。

冬のサンクトペテルブルクにて