cseas nl75 特集4 たんけん動画「地域研究へようこそ」第4期公開

災害を通してみる地域の姿:
被災地アチェのこれまでとこれから

西芳実

 私は大学院生の時、インドネシアの歴史を研究するためにインドネシアのアチェ州にあるシアクアラ大学に留学しました。アチェは1970年代からインドネシアからの分離独立運動が続いており、私のアチェ滞在中も内戦状態にありました。幸いにも私が住んでいる地域では激しい戦闘はなく、私は大学で先生や友人たちに助けられながら調査を進めるとともに、ホームステイ先の家庭を通してアチェ人にたくさんの知り合いができ、言葉や文化や社会についての理解を深めることができました。

 帰国後の2004年12月26日にスマトラ島沖で巨大な地震と津波が発生し、インド洋沿岸の国々に大きな被害をもたらしました。震源に最も近かったアチェ州では17万人以上が犠牲となり、生き残った人たちも家族や友人を失いました。

 研究対象地域の人々が危機に直面したときに研究者はどのように対応するのか。いろいろな考え方がありますが、私は人々が危機を乗り越えようとする過程をともに経験しながらそれを記録し、その意味を考えることにしました。アチェでは津波を契機に30年続いた内戦が終わり、災害と内戦からの二重の復興に取り組むことになりました。

 アチェの人々は、未曽有の災いによってもたらされた困難や喪失感を抱えながら、あきらめたり打ちひしがれたりすることなく、自分たちの経験が次の世代や他の地域の人々がより安全な社会に暮らすための助けとなることを願って復興に取り組んでいます。

 日本を含む世界の人々にアチェの経験を伝えることは、災害による被害が少ない世界をつくることに役立つと信じています。