11.1 Poverty Reduction and Financial Inclusion in Indochina Countries

本パネルは三重野(京都大学)主催し、司会および討論者を担当した。当パネルセッションでは、タイ、ミャンマーを含むインドシナ諸国の金融環境と貧困緩和に関わるテーマの3つの研究が報告された。

Kanittha Tambunlerchai氏(チュラロンコン大学・講師)は、ミャンマーにおけるマイクロファイナンスの展開とそれへのアクセスの条件についての研究が報告された。ミャンマー全域における5100世帯の調査に基づき、2011年の改革以降ミャンマーで急速に広がるマイクロファイナンスへのアクセスには、送金の有無や地理的・社会経済的条件が重要な決定要因であり、世帯や世帯主の金融取引に対する行動経済学的な態度とは関係が薄いことが報告された。

Chansathith Chalunsunh氏(元ラオス経済開発研究所・研究員)は、ラオスにおける初等教育の就学、特に中退率(dropout rate)の問題についての研究を報告した。都市部・農村部を網羅する世帯調査の分析に基づき、ラオスにおいて家事労働、親の態度および資金の借入制約が大きな決定要因になっていることが実証的に説明された。

芦苑雪氏(京都大学大学院・博士課程)は、タイにおける商業銀行の外国資本の進出とそれが銀行に与える業務・収益行動への影響についての研究を報告した。今世紀にはいってからタイでは、銀行部門への外資の参入が著しい勢いで進み、このセクターのプレーヤーが一変し、新技術導入による生産性上昇がみられること、しかし市場環境の観点から見ると政策面で想定されていた競争環境の強化には必ずしもつながっておらず、むしろ寡占性が強くなったこと、などが報告された。

それぞれの報告に対し、参加者から多くの質問とコメントがなされ活発な議論が行われた。東南アジア研究の分野における本セッションのように貧困緩和と特定の経済セクターとの関係に着目した実証研究の意義を確認して、セッションを終了した。

1. Addressing Out-of-School Children in Lao PDR: Case Study in Poor Performance Provinces
Chansathith Chaleunsinh (National Economic Research Institute, Laos)

2. Financial Inclusion in Myanmar: What Factors Determine Access to Saving and Credit
Kanittha Tambunlertcha (Chulalongkorn University)

3. The Effects and Pattern of Foreign Bank Entry in the Thai Domestic Banking Sector from 1999 to 2014
Wanxue Lu (Kyoto University) Discussant: Sukanda Lewis (Chulalongkorn University)

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