研究代表者:奥宮 清人(京都大学・東南アジア研究所)
共同研究者:葛原 茂樹(鈴鹿医療科学大学・保健衛生学部医療福祉学科)
小久保 康昌(三重大学・大学院地域イノベーション学研究科)
Eva Garcia del Saz(高知大学・地域連携推進センター)
松林 公蔵(京都大学・東南アジア研究所)
藤澤 道子(京都大学・東南アジア研究所)
実施期間:2013-2014
研究概要:
インドネシア・パプア州(西ニューギニア)は、グアム島や日本の紀伊半島とならんで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン症候群が多発する世界3 大地域のひとつである。同地域の現地研究者と協力し、神経難病の病型や予後の縦断的な変化と、環境変化との関連を調査することにより、病因に寄与する環境要因を研究する。
詳細:
インドネシア、パプア州では、通常の100 倍以上の神経難病の多発が報告されたが(1970 年代)、その後、十分な調査がなされていなかった。一方、グアムでは、生活様式の近代化とともに、1980 年代にALS の急激な減少とパーキンソン症候群の割合の増加が報告された。我々の最近のパプアの調査により神経難病の多発を確認した。まさに今、生活の近代化が浸透してきており、時代的な環境変化に伴う神経難病の病型の変遷を調査し、病因に寄与する環境要因を明らかにすることが目的である。
土壌や飲料水中のカルシウムやマグネシウムの欠乏や、そてつの実の神経毒が病因に関与するという仮説があるが、まだ確証はない。パプア州の症例は、紀伊やグアムに本来多発していたALS/パーキンソン/認知症複合と酷似しており、同一疾患である可能性が高い。パプアは、現在でも神経難病が多発している点が世界の多発地域の中でも特異的であり、縦断的に環境変化と病型の変遷を調査することにより、病因に迫る意義は大きい。
横断的、縦断的調査により、神経難病の頻度と推移を明らかにする。同一患者および家族内で、ALS、パーキンソン症候群、認知症の合併を調べ、ライフスタイルや生態学的な要因と、疾患や老化との関連を明らかにする。高齢者包括的機能検査、栄養調査、飲料水や身体(毛髪等)の金属分析の結果と、環境変化にともなう病態の変遷や予後を縦断的に比較することにより、病因に迫ることが期待される。