cseas nl75 年次報告会 CSEASワークショップ

共同利用・共同研究拠点 CSEASワークショップ

柳澤雅之(京都大学東南アジア地域研究研究所)

東南アジア地域研究研究研究所(CSEAS)のふたつの共同利用・共同研究拠点(CIRASおよびIPCR)の報告会に先立つ2020年2月13日の午前、CSEASワークショップ「文理融合研究の将来を見据えて」を開催した。本ワークショップは、従来のCIRASワークショップを全所的に拡大し、CSEASの活動を、おもに共同利用・共同研究拠点にかかわる方々と共有し、議論する場を設けようとしたものである。ワークショップの趣旨とプログラムは次のようである。

趣旨:文系と理系の垣根を越えたさまざまな研究がCSEASで行われるようになってきた。個人が遂行する研究のアプローチや期待される成果をお互いに知ることで文理融合研究の面白さを共有し、今後、当研究所が向かうべき方向を議論するための第一歩とすることを目的とする。

プログラム:
趣旨説明:柳澤雅之
“Toward the Regeneration of Tropical Peatland Societies: Building International Research Network on Paludiculture and Sustainable Peatland Management” 甲山治
“Incentives on the Road: Multitask Principal-Agent Problem and Accidents in the Trucking Industry” 町北朋洋
“Rethinking “Temple-mapping Project”: A Case Study of “Area Informatics” 小林知
“Methodological Eclecticism Or the Art of Not Being Governed (by Canons)” マリオ・ロペス、柴山守、ネーサン・バデノック
コメント:帯谷知可、キャロライン・ハウ

 ワークショップでは、さまざまな話題が取り上げられた。たとえば、文理融合の学際研究を越え、行政や企業、現地住民らと共同する超学際研究の実践手法について。あるいは、研究テーマの設定には、学術界だけでなくエンターテイメントの世界とも共通した課題が取り上げられることを話の糸口にして、現代的課題の設定やアプローチについて。地域研究と情報学の融合を目的としたプロジェクトの成果と今後の課題について。さらには、CSEASの多様な東南アジア研究の歴史を情報学の手法を使って可視化したうえで、今後の研究の多様な展開について。これらは、要覧執筆者の個人的な感想であるが、おそらく、ワークショップ参加者は、ワークショップで取り上げられた話題を聞いて異なる刺激を受けたであろう。しかし、多様であることを許容すること、その中から新しい課題や方向性を見出すことの重要性については、共通の理解が得られたと思われる。残念だったのは、議論を深めるための十分な時間をとることができなかったことである。今後、CSEASとして継続して議論を深め、所外の方々に報告する機会も設けたい。