cseas nl75 年次報告会 IPCR

共同利用・共同研究拠点
「東南アジア研究の国際共同研究拠点」

小泉順子(京都大学東南アジア地域研究研究所)

東南アジア地域研究研究所は、共同利用・共同研究拠点として、「東南アジア研究の国際共同研究拠点」を実施している。その目的は、国内唯一の東南アジアを名称に冠する研究所として、国内外の東南アジア研究者コミュニティに研究所のリソースを提供し、活用してもらうことで、研究所を場とした共同利用・共同研究を推進することにある。具体的には、<タイプⅠ:海外連絡事務所を活用したフィールド滞在型研究>、<タイプⅡ:外国人客員制度を活用した拠点集中型研究>、<タイプⅢ:豊富な所蔵史資料を活用した資料共有型研究>、<タイプⅣ:近い将来のプロジェクト形成を目指す萌芽型研究>、<タイプⅤ:『地域研究叢書』の公募出版>、<タイプⅥ:若手育成のための個別研究>、<タイプⅦ:若手の国際発信力強化型研究>の7つの種類の共同研究を用意し、うち6つについて公募をおこない、外部者を含む委員会での審査を経て採択を決定している。

 2020年2月13日及び14日に、2019年度の年次研究成果報告会を稲盛財団記念館で行った。13日はタイプⅥの6件、14日はその他のタイプの共同研究計26件(うち終了課題13件、継続課題13件)について、その代表者が進捗と成果を報告した。人文社会系から自然科学系まで、史資料の共有化をめぐる基礎研究から社会貢献を射程に入れた実践的な研究まで、研究所の特徴である学際的な雰囲気のもと幅広い研究活動の概要が紹介された。

 14日の最後には、本研究所の三重野文晴教授の司会のもと、佐藤若菜(新潟国際情報大学国際学部)、小泉佑介(上智大学アジア文化研究所)、渡辺長(帝京科学大学医療科学部)、飯塚宜子(本研究所)、 安藤和雄(本研究所)の各氏が登壇し、本拠点の運営について意見を交わした。専門分野の壁を取り払い、文理あわせて多様な研究者が一堂に会し交流する中で、自らの研究の方法論を問い直し、新たな展開を考える場として年次成果発表会は貴重であるという声が複数の登壇者からきかれた。その一方で、年一回の発表会に限らず、IPCRの下で共同研究を実施しているグループのメンバー間のMLの構築など、さらに相互情報発信を活性化しハブ機能を促進する方向での一層の努力、より踏み込んだ相互のかかわりあいを作る演出、既存のネットワークの外にいる若手へのアプローチなどの必要性も指摘された。