環境共生研究部門・教授
博士(獣医学、山口大学)
専門分野は食品衛生学、人獣共通感染症学、動物感染症学
2019年7月1日付で環境共生研究部門に赴任いたしました山崎渉です。ディシプリンは公衆衛生学で、私は獣医師でもあります。愛知県で生まれ、北海道帯広市で大学生活を送り、滋賀県と大阪府、宮崎県で行政職員や研究職員、大学教員をしてきました。多くの方々との出会いや不可知な力によって、東南地域研での研究機会を与えていただきました。
エジプトのベンハ大学でおこなった遺伝子検査法の講習会の一コマ
幼少期から引っ越しが多かったせいか、放浪癖があります。高校時代の愛読書には、日本初のバックパッカー作家とも言える小田実さんの「何でも見てやろう」、写真家の藤原新也さんの「印度放浪」、「西蔵放浪」がありました。大学入学後に念願かなって、アジア、アフリカ、中米、オーストラリアにてバックパッカーをしました。現地に深く入り込み文化や社会を洞察する素養は自分にはなかったので、表面的な交流や見聞を経験するのみでした。しかし、多くの方々と出会うことで、文化や社会、思想の多様性、経済格差、不平等、政治体制に伴う抑圧、マスメディアを介さない一次情報を得る重要性などについて、自分なりに考え始めるきっかけを得ることができました。また、公正、尊重、規律、謙虚、相互理解、協調性、責任感のような、どこの地域や文化圏でも普遍的に認められる価値観を日々実践することが、人として重要であることを学ばせていただきました。
社会人となってからは、ディシプリンの放浪をしましたが、公衆衛生学が自分にとっての安住の地でした。公衆衛生学は、微生物学、感染症学、食品衛生学、環境生態学、疫学、歴史学、行政学などを含む様々なディシプリンを取り込んで実社会の問題解決を指向する学問であり、それ自体が学際的研究の要素を包含していると私は理解しています。 現在はグローバル化と感染症の関連に興味を持っています。有史以来、人や食料、動物の国境を越えた移動の増加に伴い、様々な感染症が世界に拡散しています。例えば、19世紀以降の帝国主義や植民地主義の拡張によって、ガンジス川流域の風土病であったコレラは世界流行を引き起こしました。また、森林開発によって、野生動物と人との接触機会が増加した結果、エボラ出血熱等の新興感染症が発生しています。このような様々な感染症の制御のために、国内外の研究者・企業と連携して、新しい検査法の開発や普及などに取り組んでいます。今後は東南地域研で様々なディシプリンの方々と学際的共同研究を進めていきたいと希望しています。 皆様、よろしくお願いいたします。