東南アジア地域研究研究所は、2つある共同利用・共同研究拠点の1つとして「東南アジア研究の国際共同研究拠点」を実施している。その目的は、国内外の東南アジア研究者コミュニティに研究所のリソースを提供し、活用してもらうことにより、当研究所を場とした共同利用・共同研究を推進することにある。
2020年度の年次成果報告会は、当初2021年2月16 - 17日に京都で実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大のため、オンライン形式に変更して実施された。16日はタイプVIの若手による研究課題の報告会を開催し、「インドネシアの保健政策における統治性の問題」(阿由葉大生、東京大学大学院)、「在バンコクベトナム寺院漢喃経典を用いた近代東南アジア大乗仏教の批判的考察」(亀山隆彦、龍谷大学)、「『ワールドミュージック』のなかのインドネシア音楽──日本の音楽評論家たちの言説分析」(金悠進、国立民族学博物館)の三氏による充実した報告がなされた。
17日の報告会は、第1部「今年度の公募共同研究実施に関する意見交換会」と第2部「総合討論」の2部構成で実施された。第1部ではタイプI~IVの研究代表者に、新型コロナ禍の中の今年度の研究活動上の課題や対応について発言をいただいた。その後、所員の 山崎渉氏、マリオ・ロペズ氏、坂本龍太氏がコメントし、続いて意見交換を行った。海外調査ができない状況でも、現地カウンターパートとの間に構築してきた緊密な関係を活用して研究を進めた例や、オンライン会議を利用して頻繁なディスカッションを実施した例、コロナ禍ゆえの新たな研究課題の発見例などが紹介された。報告会とは別に、タイプI~IVの研究代表者には今年度の研究の成果を動画ファイルの形で作成していただき、ホームページにて関係者向けに公開し、質問やコメントを募った。
第2部の総合討論では、御田成顕氏(森林総合研究所)、 柿崎一郎氏(横浜市立大学)、 内藤直樹氏(徳島大学)、丸井雅子氏(上智大学)、 横山智氏(名古屋大学)の5名の研究代表者、および所員の 町北朋洋氏が登壇し、本拠点の運営や当研究所の活動等について意見を交わした。間口が広く、多分野の交流が可能であるという現行の共同利用・共同研究の利点や、図書室に所蔵される史資料の利用価値などに関して肯定的な声が多く寄せられた。一方、若手研究者や大学院生に対するアウトリーチの重要性が複数の登壇者から指摘され、さらなる展開へ期待が示された。