東南アジア地域研究研究所は、新型コロナ・ウィルス感染拡大という状況を受け、東南アジア学会(JSSEAS)と連携して、2020年12月19日(土)、東南アジアの現状についての対話を目的とした国際シンポジウムを開催した。使用言語は英語、オンラインによる開催であった。
2020年3月11日、世界保健機関(WHO)は、重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV-2)が世界的なパンデミックになったと宣言した。発生の震源地に近い東南アジアは、感染もパンデミックの影響のどちらも免れることはできず、その結果、現在、この数十年で最悪の経済・金融・社会危機に直面している。このため外出禁止令、部分的あるいは全面的な封鎖、人の動きを遮断する国境の閉鎖などを通じ、各国は国境をまたいで発生している感染拡大に対応してきた。東南アジアはこれまでもパンデミックと無縁ではなく、2003年のSARS発生の経験を経て、各国は協調的かつ迅速に対応してきた。しかし今回の危機によって、地方レベルで絶え間なく変化している状況に対する、医療システムおよび政府のさまざまなレベルでの準備不足と脆弱性が明らかになった。
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それでもその中で行われてきたソーシャル・ディスタンス、公共スペースの閉鎖、 隔離令に違反した場合の厳しい罰則などの措置は、様々な政治的反応を呼び起こしている。これらの反応は、多様な経済活動、大規模なインフォーマル・セクター、富の不平等、長引く政情不安、脆弱な統治形態を特徴とする東南アジアに壊滅的な影響を及ぼした。その結果、パンデミックは、東南アジアが直面している課題と現在進行中の危機に対する、各国個別の、あるいは共同での管理能力を露呈させた。 また、パンデミックは、一部の国で進行中のイスラーム化、台頭する中国との新たな政治経済的関係、民主的プロセスの弱体化、都市化の加速、新しいデジタル技術とそれに精通した集団の台頭など、この地域特有の状況から生じている既存の問題を悪化させている。
パンデミックという現在の不安定な状況の中で、今回の報告者5名はいずれも感染現場の最前線に立ち、この地域が経験している動向を調査し、記事を執筆し、発表してきた著名なジャーナリストである。各報告者はまた、この困難な状況下において、多くの難しい問題に向き合ってきた―パンデミックに対する政府の対応計画はどのようなものだったのか?コミュニティに対する管理と統治を正当化するために、どのような言説が構築され、動員されてきたのか?どの国や地域において緊急対策、法律、規定が整備されてきたのか?それらは適切なものだったのか?住民の管理と監視において、どのようなテクノロジーが新たに導入されたのか?それらは住民の行動を変えるという点で、長期的にはどのような影響があるのか?記者やメディアはどのような方法で、現在進行中の状況を自由に報道し、対応することができたのか?またコロナ・ウィルス以降、南アジアや東アジアの近隣諸国との地政学的関係はどのようになるのだろうか?このような問いとも関連づけながら、5人の討論者が、東南アジア地域がこの不確実性にどのように対処するか、その方向性とはどのようなものかなどを議論した。
Program |
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Moderator: Okamoto Masaaki (Kyoto University) |
13:20-13:30 Introduction Mario Lopez (Kyoto University) |
13:30-13:50 Slow virus response, quick rights suppression: The Philippine Covid-19 Experience Marites Vitug (Rappler) Discussion: Seki Koki (Hiroshima University) |
13:50-14:10 Reporting on Covid-19 amidst Political Upheaval in Malaysia Tashny Sukumaran (South China Morning Post) Discussion: Suzuki Ayame (Doshisha University) |
14:10-14:30 Is the COVID-19 Lockdown Undermining Journalism in Myanmar? Ye Ni (Irrawady) Discussion: Nakanishi Yoshihiro (Kyoto University) |
14:30-14:50 Regressive Indonesian Freedom? The Rise of Digital Harassment against Journalists and Civil Society under COVID-19 Abdul Manan (Tempo) Discussion: Kawamura Koichi (IDE-Jetro) |
14:50-15:10 Thai Press’ Over-reliance on Government Information about COVID-19 Pravit Rojanaphruk (Khaosod English) Discussion: Edoardo Siani (Ca’ Foscari University) |
15:10-15:20 coffee break |
15:20-15:50 Free Discussion Moderator: Machikita Tomohiro & Mario Lopez (Kyoto University) |