cseas nl75 特集4 たんけん動画「地域研究へようこそ」第4期公開

フィールドワークの第一歩は、天気図の作成

小川まり子(京都大学東南アジア地域研究研究所)

 私がフィールドワークに興味をもったきっかけは、まち歩きや山歩きでした。 自分の足で歩きながら、まちの様子を見たり聞いたり、人と話をしたり・・。山登りでは、地図を持ちながら地形をみたり植物を観察したり、観天望気をしながら行動します。そのような作業は、身体全体で感じて考えるので、何年経っても記憶に残っています。

 学生時代、土木工学科の気象学研究室では雨や雪、それらに関する自然災害について学びました。ある雲の発達過程には、雨が生成する前、たくさんの雪(氷の結晶)が様々な形やサイズで雲内に含まれています。雪の降らない地域で育った私としては雪の話が新鮮でした。現在研究しているインドネシアの泥炭地火災も雨が深く関係しています。しかし、この問題を解決するには雨の知識だけでは難しく、土地が放棄されずにきちんと管理されるための社会の仕組みや経済なども考えなければなりません。

 私が最初にインドネシアに興味をもったのは、インドネシア人の友人と一緒に過ごした大学院生時代でした。インドネシアは地震や火山噴火、洪水など、日本と同じように災害が多い国であることを知りました。洪水で家屋が浸水したニュースを毎年のように耳にしますが、水が腰近くまで浸りながら歩いて移動(避難)したりバイクを押している姿には毎回驚かされます。一方で、人と人とのつながりが強く、互いに助け合いながらも、多様な宗教や文化、言語が存在する中でそれぞれが生活している姿にとても惹かれました。

 日本とインドネシアでは災害に対する考え方・捉え方も異なると思います。私は防災気象情報を市民に一方的に提供するのではなく、彼らの暮らしの中でどのように気象情報を捉えるのか、役立てられそうか、一緒に考えてゆきたいと思っております。

 本動画は、土木工学など理系の分野から地域研究の世界に入ることになった例として、ご覧いただければ幸いです。