活動詳細

地域研究は様々な研究ドメインの複合体であり、地域を全体として把握したり、国境を越えたヒト・モノ・カネの動きなどを把握したりする場合、ドメインを越えたデータ・情報・知識の共有が必要となります。そのためには、これら研究資源を、①データベースとして組織化し、②共有化し、③利活用するための仕掛けが必要です。研究成果国際共有化班は、そのような情報システムの研究開発を分担しています。具体的には京都大学地域研究統合情報センターが開発中の地域研究情報基盤を利用します。この情報基盤にはデータベース構築支援機能、データベース統合検索を実行する資源共有化機能、時空間検索機能、Webサービス機能などが用意されており、高度な情報処理機能を持つデータベースを容易に構築できます。これを土台として、本プロジェクトである「東南アジアにおける持続型生存基盤研究」で必要とされる情報処理機能の実現を図りながら、地域研究用情報処理システムの実現を目指します。

2011年度は、京都大学地域研究統合情報センター、京都大学東南アジア研究所、国立民族学博物館、総合地球環境学研究所および北海道大学スラブ研究センターの５機関37データベースの共有と多言語検索の実現を図りました。この多言語資源共有化システムは、試行システムとして、地域研究統合情報センターおよび東南アジア研究所学内からの利用が可能となっています（Fig. 1～3）。

Fig_1：多言語資源共有化システムの検索画面

Fig.2：多言語資源共有化システムの検索結果一覧画面

Fig.3：多言語資源共有化システムの検索結果詳細画面

2012年度は、地域研究資料群をどのように整理・統合し、利用に供するかという観点からシステム開発を試みました。具体的には、故石井米雄・京都大学名誉教授が1957～2010年までに収集した図書・研究資料や調査地で撮影した写真コレクションを対象とし、図書・冊子体2,567点、抜刷・研究資料等6,906点、写真資料約5,000点についてアーカイブデータベースを構築しました。ここには、タイ国三印法典、タイ国歴史地図、貝葉資料のほか、東南アジア地域研究やタイ史・法制度研究、言語研究に重要な資料群が含まれています。また言語関係では、シャン・タム文字文化圏などタイ諸語、モン文化圏に関する周縁諸国の言語関係資料、文献ではオランダ、フランス、スリランカ・インド関係文献など貴重資料も含まれています。この研究資源 Fig.6：研究資源アーカイブシステムにおけるキーワードネットワークの例アーカイブデータベースの特色は、通常の文字列検索（Fig.4）に加えて、仮想書架というグラフィカルユーザインタフェース（Fig.5）や、資料のタイトル等に含まれている語彙の共起に着目したキーワードネットワーク（Fig.6）を利用した知的検索など、新しい検索手法を試みている点にあります。研究資源アーカイブデータベースについては、まもなく試行公開の予定です。

Fig.4：研究資源アーカイブシステムの通常検索画面

Fig.5：研究資源アーカイブシステムの仮想書架画面

Fig.6：研究資源アーカイブシステムにおけるキーワードネットワークの例