東南アジアは、多様な民族、宗教、文化をもって構成されます。その多様性を共存させつつ、地域全体としては経済的前進を遂げ、人、モノ、カネ、情報の流れの結節点となっています。しかし同時に、熱帯林の減少や生物多様性の危機、災害、疫病、高齢化、民族や宗教の抗争、経済的階層化と貧困など、多くの問題を抱えています。
そうした中で、このような多様性にもかかわらず、共存と持続性はどのようにして保たれているのでしょうか。人々の日々の生活基盤である地域の社会基盤を、どうすれば公的資源にできるのでしょうか。そして、それを既存のガバナンス・システムと補完させて上記の諸問題の解決につなげるには、どうすればよいのでしょうか。
これらの疑問への答えを、東南アジアの現状に即して見いだすために、京都大学東南アジア研究所は3年間の「ビジュアルドキュメンタリープロジェクト」を開始し、人々の日常生活のありようを視覚的にとらえて検討します。ドキュメンタリーは、日々の社会生活の諸相をとらえる上で最も効果的なメディアの1つです。このプロジェクトは、東南アジア社会についてこれまでに蓄積された研究成果を補完するために、映像表現作品を活用します。プロジェクトでは3つのテーマを取り上げます。それぞれが独立したテーマですが、相互に関連もし、全体として東南アジア地域の「多元共生社会」を探ろうとする試みです。
多元共生社会は、個々の社会内部あるいは個々の社会を越えて存在する潜在的多様性のすべてを包含します。同時に、人々が共有する経済・政治・社会制度に内在する危険要因を表出させもします。
プロジェクト1年目は、東南アジアの「ケア」をテーマとしました。2年目と3年目は、地域の今日的課題を考慮して「移動と交渉」、「資源管理の政治文化」などといったテーマを取り上げる予定です。
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Interview: Dr Mario Ivan Lopez introduces the 2014 Visual Documentary Project "People and Nature in Southeast Asia"