本共同研究では、東南アジアと隣接するアジア諸国において進行するトランスナショナリズムを「脱国家領域的ネットワーク形成」と「新地域再編」の二つの鍵概念を中心としながら検討する。 【脱国家領域的ネットワーク形成】 本クラスターでは、人・モノ・情報などの国境を超えたフローが、東南アジア島嶼部陸域と海域、大陸部東南アジア諸国間ならびに中国、さらには東南アジアと東アジアを縦断する脱国家領域化したネットワークを形成することに焦点をあてる。トランスナショナリズムを抽象概念ではなく、徹底的な実証研究の対象とし、労働者、小生産物(商品)、企業家、資本、家族・親族集団などに加えて、農業技術、自然資源管理、宗教、ジェンダー思想から感染症などの疾病の伝播に至るまで広く国境を越えた社会的流動の諸相を明らかにする。 【新地域再編】 脱国家領域的なネットワークの形成のもとでは、従来の国家を主体とし、領土を単位としたものとは異なるネットワークの空間的な制度化が進み、新しい地域形成の起動力となる。本クラスターでは、「ASEAN・中国自由貿易地域」「メコン構想」など国家をこえる地域構想を具体的事例としながら、「境域」(borderland)や「国家コミュニティ」(community of nations)などの地域再編に注目し、架境的フローの領域的実態化の動態を検討する。 ◆Dr. Shu-Yuan Yang 所 属: Assistant Research Fellow Institute of Ethnology, Academia Sinica 期 間: 2010年11月12日〜11月25日 受 入: 速水 洋子 (京都大学東南アジア研究所 教授) 【平成21年度】 平成22年2月26−27日に京都大学東南アジア研究所に於いて国際ワークショップ Writing Radically Different Southeast Asia: from Non-State-Centered Perspectivesを開催した。本ワークショップは、平成23年1月に開催を予定している国際シンポジウムのためのブレインストーミング・セッションという意味をもつものであり、参加者には事前にワークショップの趣旨を周知し、各自からディスカション・ポイントを提出してもらい、ワークショップでの議論をより良いものとすることができた。タイ、マレーシア、シンガポール、アメリカ合衆国、台湾において人類学、歴史学、国際関係論、政治学など第一線で活躍する研究者の参加を得て、トランスナショナリズム、山地−低地関係、周縁国家権力論、国境社会論、海域論、商品連鎖、ジャンダー論などさまざまな視座から、国家を再構築しながら新しいトランスナショナリズム論の構築にむけた議論が交わされた。 【平成22年度】 共同研究2「アジアの脱国家領域化:ネットワーク形成と新地域再編」は、二つの主要テーマから構成される。そのうちの共同研究2−1「脱国家領域的ネットワーク形成」は、人・モノ・情報などの国境を超えたフローが、東南アジア島嶼部陸域と海域、大陸部東南アジア諸国間ならびに中国、さらには東南アジアと東アジアを縦断する脱国家領域化したネットワークを形成することに焦点をあてることを目標に始めた。前年度9月に、J. スコット著 The Art of Not Being Governedが出版されたのを契機に、国家支配の周縁に位置する人々の歴史と現在をテーマに共同研究1と合同で2月セミナー「東南アジア地域理解の再編:国家中心的な記述を脱して」を開催したが、今年度は、引き続きこのテーマで進める。前半はシンポジウムに向けて準備を進め、1月にはジェームズ・スコット氏を招き、さらに議論を進めるシンポジウムを開催する。トランスナショナリズムを抽象概念ではなく、徹底的な実証研究の対象とし、労働者、小生産物(商品)、企業家、資本、家族・親族集団などに加えて、農業技術、自然資源管理、宗教、ジェンダー思想から感染症などの疾病の伝播に至るまで広く国境を越えた社会的流動の諸相を明らかにする。 共同研究2−2「新地域再編」については、タイのタマサート大学を中心にメコン流域再編をテーマとしてプロジェクトを進める。ベトナム、ラオス、中国の研究者も擁して、流域開発、河川運行、国際的な取り決め、観光開発などをテーマにメコン川流域各国が、どのように国の枠組みを踏まえつつこれを超える事業に参与しているか、それによって流域で現在どのような変化が起こっているのかを検討する。脱国家領域的なネットワークの形成のもとでは、従来の国家を主体とし、領土を単位としたものとは異なるネットワークの空間的な制度化が進み、新しい地域形成の起動力となる。本クラスターでは、「ASEAN・中国自由貿易地域」「メコン構想」など国家をこえる地域構想を具体的事例としながら、「境域」(borderland)や「国家コミュニティ」(community of nations)などの地域再編に注目し、架境的フローの領域的実態化の動態を検討する。 |
|
▲ページトップ | |