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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「イラワジデルタの環境変動」
研究代表者: 春山 成子 (三重大学・大学院生物資源学研究科)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

東南アジアの巨大河川であるイラワジ川流域の完新世における環境変動を水関連災害として河川堆積物を基にして、過去の高潮、津波、河川洪水などの大きな自然災害のイベントを見出すことによって、環境変動の歴史を高精度で明らかにする。さらに、流域中流地域の半乾燥地域における環境変動については、パガン王朝以降の流域に対しての人間活動の関与、土地被覆変化を推定し、乾燥地域の環境変動が下流デルタにどのような影響を受けたのかについて評価する。

研究目的・意義・期待される効果

バゴ河川

バゴー川流域の土地利用

モンスーンアジアでは河川の挙動が人間の歴史に大きな影響を与えていることが知られているが、イラワジ川では人間の世紀である完新世での環境変動は明らかではない。本研究では地図資料、地質資料、ボーリングによって河川の歴史的プロセスを明らかにする。デルタには高潮、津波、河川洪水などの大きな災害イベントが平野に刻まれており、災害史が明らかになる。乾燥地域に大きな王朝を形成して農業施設に力を入れたパガン王朝以降の人間活動の流域への関与がデルタに与えた影響も評価しうる。イギリス統治時期では小縮尺での地形、地質にかかわる研究は進められていたが、既往研究では、完新世以前の古い地質に注目した人間の歴史の関与は語られていない。完新世は汎世界的な気候変動と海面変動によってデルタが変動しているのであり、イラワジデルタでも、同様の変動を受けたが環境変動史は明らかではない。人間の活動を加えて、流域変化、土地被覆変化によって大きく変動しているそのプロセスを明らかにすることで、本研究によって東南アジア地域では唯一、不明であった、当該地域の環境変化を明らかにしうる。ヤンゴン大学から土地利用研究者ならびに地形学の研究者を招聘し、現段階での研究を整理し、これらを基礎にして、オールコアボーリングは河川の環境変動史を明らかにすることができよう。堆積物から読み解く環境変動史には土地利用変化の影響も加味されるため年代の刻みを考えた歴史変動を議論することはモンスーンアジアの巨大河川流域の環境変動に一石を投じることになろう。

研究成果概要
この研究では外邦図と2000年撮影の衛星画像を用いて約60年間の期間でイラワジ川のマンダレー盆地からイラワジデルタ先端部までの河川蛇行度の変動を計測してみた。その結果、河口部と盆地での変化率は低いものの、狭窄部において変化率が高くことわかった。2000年代では屈曲度が下がり直線化に向かっていることが明確になった。また、河川屈曲は地形とよい相関が表れた。さらに、デルタ中央部のヤンドン地点でオールコアボーリング30mの掘削をおこない、河川流域の形成プロセスの環境変動の過程の分析を行った。イラワジデルタは高潮、河川洪水などの災害イベントの跡が刻まれていることがわかった。完新世は汎世界的な気候変動と海面変動によってデルタは変動しているが、イラワジデルタのヤンドン地点における調査では環境変動史として30メートルの深部を掘削し、地層の年代を調べたところ、1万4000年前に堆積が進んでいたことまでが明らかとなった。人間活動も加わりイラワジ川流域の土地被覆が変化することによって堆積が加速化されているようであるが、この研究課題は来年度に継続して行いたい。