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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「東南アジアにおける水産資源の利用と管理に関する比較研究」
研究代表者: 石川 智士 (東海大学・海洋学部)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

東南アジア沿岸域においては、きわめて類似した水産物資源が利用されているものの、その漁法や販売方法は地域ごとに異なっている。また、資源管理に関する住民意識や社会システムも、文化的・社会的多様性から影響を受け、地域ごとに様々である。本研究では、水産資源の利用状況と管理方策および資源管理に関する意識の違いを整理し、アジアにおける水産資源の管理方策について特徴を比較検討する。

研究目的・意義・期待される効果

タイ王国ラヨーン地区に導入された、住民組織による日本型定置網の漁獲作業

フィリピン国パナイ島バタン湾の小型定置網(魞)。
過剰漁具設置が問題となってきている。

南シナ海に面した東南アジア沿岸域においては、アジ・サバ類やキス類など共通する漁業資源が多数利用されている。しかし、その漁獲方法や流通・販売方法は、旋網を中心としたタイ沿岸域と刺網や魞を中心としたフィリピン沿岸域では大きく異なっている。また、冷凍設備が整った大型漁港での漁獲物扱いと主要都市部から離れた地域での漁獲物の取り扱い方法や価格決定システムは、各国内でも大きく異なっている。これらの違いは地域住民の資源の有効利用への意識や資源管理への取り組みに大きな差をもたらしている。

本研究においては、資源利用の状況把握と管理に関する住民意識ならびに管理システムについて精査し、その比較検討から今後の水産資源管理に関して考慮すべき点を、住民視点で整理することを目的としている。本研究の主な対象エリアは、タイ王国シャム湾周辺とフィリピン国パナイ島周辺の漁業・漁村である。これらの地域において、分野横断的・学際的なフィールド調査を実施し、データと情報を収集する。大陸に連なるタイ王国と島国であるフィリピンの資源利用状況と管理方策の相違点を住民視点で整理することで、東南アジアの水産資源管理に関し普遍的な重要性を有する要因が把握できるものと期待している。

このような取り組みは、今後の沿岸域の開発に関して、経済規模拡大を目指す現代の開発概念に対して警鐘を鳴らし、開発と保全に関する新たな基準を提示することにつながるものと期待している。

研究成果概要
タイ王国ラヨーン地域における住民組織による定置網の運用について、調査を実施した。加えて、ラヨーン地域における漁業資源の利用と地域住民の関わりについて調査し、水産資源を基本とした地域産業の関連性をネットワーク図としてとらえた。フィリピン国パナイ島においては、ギマラス島において市場と流通インフラ整備の差が、水産物流通と価格決定に与える影響を調べた。加えて、パナイ島北部における沿岸環境と資源状態の過去20年にわたる経年変化を調べ、その変化の背景にある社会的な変化について考察を行った。
 海外における調査は、タイにおいては東南アジア漁業開発センター訓練部局ならびにタイ政府水産局のEastern Marine Fisheries Research and Development Centerと、フィリピンに関しては、フィリピン大学ビサヤス校、東南アジア漁業開発センター養殖部局、アクラン州立大学と合同で実施した。