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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「地方自治における住民参加に関する比較研究一タイ、フィリピン、インドネシア」
研究代表者:永井 史男(大阪市立大学・大学院法学研究科)
(実施期間:平成21年度~平成22年度)

研究概要

タイ、フィリピン、インドネシアにおける地方自治における住民参加の実態を踏まえたうえで、いくつかのパターンを抽出し、それを2011 年度に実施する予定の大規模自治体サーヴェイ調査に活用する。

タイについてはすでに2006 年に実施した自治体サーヴェイ・データがあるので、それの分析・加工のために研究会を開催する。

フィリピンとインドネシアについては、海外調査を実施し、国内で研究会を重ねたうえで、地方自治ガバナンスに影響を及ぼすと考えられる重要な住民参加の独立変数を抽出する。

研究目的・意義・期待される効果

インドネシア・スラカルタ市で、自治体の情報公開を推進する地元NGOのPattiroスラカルタ事務所でインタビュー終了後に撮影したスナップ(2010年7月22日)

タイ・ナコーンシータマラート県ムアン郡パークプーン区で20年以上カムナン(区長)を務めるチャムール・シームアン氏にインタビューを終えた後、夕食をご馳走になったときのスナップ(2010年9月18日)

本研究は、1990 年代以降地方分権が進展したタイ、フィリピン、インドネシアの3 カ国を取り上げ、住民参加が地方自治ガバナンスの質にどのような影響を与えるのか、その要因、パターン、制約条件の抽出を目的とする。本研究では、いくつかの自治体での面接調査を元に住民側のいかなる要因が地方自治ガバナンスの質を規定するのか考察する。

従来の研究は大きく2 つに分かれる。1つは、地方自治や地方財政など法制度に着目した研究である。中央政府と地方自治体の関係や自治体組織内部の問題など、公式の制度に着目した研究である。もう1 つは、NGO/NPO、コミュニティにおける住民参加、スラム問題など具体的問題解決に関する研究である。後者は地方自治体と関係して論じられることも少なくない。本研究はこれら2 つの異なった研究潮流をつないだうえで、2011 年度に実施する予定の上記3 カ国における大規模自治体サーヴェイ調査の準備作業の意味合いももつ。住民参加の質が自治体のパフォーマンスを規定しているという仮説を立てているからである。

サーヴェイ調査では住民参加のパターンをいくつか想定することが重要である。本研究では、インドネシアとフィリピンで典型的パターンをいくつか抽出し変数化するのが狙いである。また、タイについては、2006 年度に実施した自治体サーヴェイ・データでまだ分析に用いていないデータ(開発計画策定、環境問題をめぐる住民の自治体アクセス頻度など)を整理、加工して分析を進める。

研究成果概要
籠谷委員は2010年7月20日~25日にかけてインドネシアに出張し、ジョクジャカルタ特別州や中ジャワ州の自治体やNGOを訪問し、自治体の住民参加の実態調査に従事した(同調査には、永井委員も私費で参加した)。その成果は8月5日の研究会で発表した。また、永井委員は、9月11日~21日にかけてタイのバンコク、ラムパーン県、ナコーンシータマラート県で調査を行い、地方自治体における住民団体やNGOの参加について調査を行った。その成果は、2月26日の研究会で発表した。さらに、永井・籠谷委員は、2010年8月5日に開催した研究会でタイの地方自治体の行政能力と住民団体の接触頻度についてSPSSで分析を行い、英文共著論文としてまもなく成果が発表される予定である。さらに、2011年2月26日及び3月4日に研究会を開催し、委員が集まって研究成果を報告し意見交換を行うとともに、3月25日の研究集会について打ち合わせを行った。