本研究は、1990 年代以降地方分権が進展したタイ、フィリピン、インドネシアの3 カ国を取り上げ、住民参加が地方自治ガバナンスの質にどのような影響を与えるのか、その要因、パターン、制約条件の抽出を目的とする。本研究では、いくつかの自治体での面接調査を元に住民側のいかなる要因が地方自治ガバナンスの質を規定するのか考察する。
従来の研究は大きく2 つに分かれる。1つは、地方自治や地方財政など法制度に着目した研究である。中央政府と地方自治体の関係や自治体組織内部の問題など、公式の制度に着目した研究である。もう1
つは、NGO/NPO、コミュニティにおける住民参加、スラム問題など具体的問題解決に関する研究である。後者は地方自治体と関係して論じられることも少なくない。本研究はこれら2
つの異なった研究潮流をつないだうえで、2011 年度に実施する予定の上記3 カ国における大規模自治体サーヴェイ調査の準備作業の意味合いももつ。住民参加の質が自治体のパフォーマンスを規定しているという仮説を立てているからである。
サーヴェイ調査では住民参加のパターンをいくつか想定することが重要である。本研究では、インドネシアとフィリピンで典型的パターンをいくつか抽出し変数化するのが狙いである。また、タイについては、2006
年度に実施した自治体サーヴェイ・データでまだ分析に用いていないデータ(開発計画策定、環境問題をめぐる住民の自治体アクセス頻度など)を整理、加工して分析を進める。