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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプI: フィールド滞在型)

「グローカル地域社会-東南アジア島嶼部と太平洋域との協働・架橋-」
研究代表者: 山本 宗立 (鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

過去、そして現在においても様々な共通点を持つ東南アジア島嶼部と太平洋域は、共にグローバリゼーションや気候変動の影響を受けて伝統的な社会・生存基盤が存続の危機に直面しており、通地域的に検討した研究が必要な時代を迎えている。そこで、両地域のこれまでの研究蓄積を融合させ、より多角的・俯瞰的に島嶼研究を検討する。また、両地域隣接地であるフィリピン・インドネシアとパラオを足がかりとして、特に農業や漁業などの生存基盤に注目し、共通地域課題研究の協働を開始する。

研究目的・意義・期待される効果

農業に関するインタビュー調査(ミクロネシア連邦ピンゲラップ環礁)

伝統的な料理「マル」を作る女性 ―発酵させたパンノキの果実を練る(ピンゲラップ環礁)

東南アジア島嶼部と太平洋域は、連続的群島島嶼性と極端な環海性・隔絶性・狭小性という点では相違がある。しかし歴史的には台湾・東南アジア島嶼部から太平洋域へ人びとが移動しており、両地域の文化基底は共通している。また「閉ざされつつも繋がる空間」で多様な文化を育み、持続的な生存基盤を築き上げてきた点も類似している。そして現在では、共にグローバリゼーションや気候変動の影響を受けて伝統的な社会・生存基盤が存続の危機に直面している。以上のように、両地域には様々な共通点があるにもかかわらず、これまで通地域的に検討した研究がほとんどなされてこなかった。

そこで、両地域隣接地であるフィリピン・インドネシアとパラオを足がかりとして、特に農業や漁業などの生存基盤に注目し、共通地域課題研究の協働を開始したい。東南アジア研究所のジャカルタ連絡事務所に滞在し、現地研究者との共同研究を推進するとともに、上記地域において現地調査を行う。また、研究会やシンポジウムを通して、フィリピン-インドネシア-パラオ-日本のネットワークを形成する。

本研究は、東南アジア島嶼部と太平洋域を主な調査地としている研究者の学際的な共同研究である。両地域におけるこれまでの研究蓄積(東南アジア島嶼部:京都大学東南アジア研究所、太平洋域:鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)を融合させることで、より多角的・俯瞰的・通地域的に島嶼研究を検討できる。また、東南アジア島嶼部研究が太平洋域を含めた研究に発展することで、日本の東南アジア研究を世界的によりアピールできると思われる。

研究成果概要
平成22年8月5日~9月8日にかけてミクロネシア連邦ポンペイ州のポンペイ島、モキール環礁、ピンゲラップ環礁において植物利用(特にトウガラシ属)に関する調査をおこなった。人びとはキダチトウガラシを栽培すべき植物と認識せず、野生化個体を利用していた。果実は生で利用されるほか、塩蔵果実や液体(熟したココヤシの果水、水など)に漬けた果実が調味料として利用されていた。葉は野菜としてスープや炒め物に利用されていた。特に小さな環礁であるモキールおよびピンゲラップでは非常に重要な葉菜であった。小島嶼においては島内での食糧確保が重要であるにもかかわらず、ポンペイ島やモキール環礁では輸入作物・食品に依存した生活に変化しつつあった。キダチトウガラシは、①上記地域の環境に適応して野生化しており、それほど手をかけなくていい、②1年を通して果実・葉を採集でき、それらが栄養にも富む、という利点があり、フードセキュリティーの観点からポンペイ州において再評価されるべき半栽培植物であると思われた。