京都大学東南アジア研究所ナビゲーションをスキップしてコンテンツへ 日本語 | English
サイトマップ | ローカルページ
Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「カンボジア農村におけるリスクプーリング・メカニズムの社会経済学的研究」
研究代表者: 福井 清一 (京都大学・大学院農学研究科)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

本研究では、東南アジアに位置するカンボジアの、特に貧困問題が深刻である農村部における、「社会的ネットワーク(social network)」と、カンボジアで観察される共同体的互助制度の「サンガハ(Sangaha-tine)」、および、家族からの「仕送り」が、家計間・家計内におけるリスクのプールにどれほど貢献しているのかについて、カンボジア農村における家計調査、フィールド実験によって検証する。

研究目的・意義・期待される効果

タケオ州の中央病院

タケオ州保健所の利用者料金表

本研究の目的は、開発途上国のひとつであるカンボジアの貧困農村において、住民の親族関係・人間関係としての「社会的ネットワーク」「互助組織」「家族からの仕送り」が、貧しい人々の生活の脅威となりうる不測のショックに直面することのリスクを緩和し、家計間・家計内でリスクをプールすることに、どのように相互に関連しながら貢献しているのかを、実態調査と実証分析により明らかにすることである。

昨年度は、主としてコミュニティー・ベースの互助制度(サンガハ)の、リスク・プーリング機能と、それに参加する人々の動機について、調査研究を実施したが、今年度は、二者間の社会的ネットワーク関係を互酬的関係、一方的関係等にタイプ分けし、それらを通じたリスク・プーリング機能に焦点を当てて調査研究を行う。

社会的ネットワーク関係とリスク・プーリングについては、すでに多くの研究が行われているが、本研究は、社会的ネットワーク関係をタイプ分けし、タイプによって機能が異なる可能性を考慮している点で独自性があり、当該分野の研究の進展にとって大きな意義があると考えられる。

また、社会的ネットワークと互助制度、仕送りを通じた家計間・家計内の贈与・インフォーマル信用交換がどのようなメカニズムで、どの程度、貧困緩和に貢献しているのかを明らかにすることは、より有効な農村の貧困緩和策を考案することに役立つと考えられる。

研究成果概要
今年度の研究成果は、以下のとおりである。
1.カンボジア稲作農村における二者間の社会的ネットワーク関係を、互酬的関係、一方的関係等にタイプ分けし、それらが、家計の直面する不測の事態による損失をプールしているか否かについて、これまでの家計調査と今年度の補足調査により収集したデータにもとづき分析し、ネットワークを通した贈与や融資が、家計員の病気・怪我・死亡によるリスク・プーリング機能の役割を果たしていることを明らかにした。
2.家計員の病気・死亡、農作物被害、資産の盗難、失業・就業など、不測の事態が稲作農村家計における子供の健康・栄養にどのような影響を及ぼしているかについて、家計調査のデータにもとづき分析し、病気、農作物被害よりも、むしろ、家計員の死亡、資産の盗難、失業、就業などの影響が大きいこと、および、社会的ネットワークは子供健康や栄養状態への、ショックの影響を緩和できていないことを明らかにした。