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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIII: 資料共有型)

「国家形成と地域社会――カンボジア官報を利用した総合的研究」
研究代表者: 笹川 秀夫 (立命館アジア太平洋大学・アジア太平洋学部)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

カンボジアの官報は、各種法令や人事異動を定期的に編集したもので、カンボジア近現代史研究の重要資料である。京都大学東南アジア研究所は、すでに1985年以降のクメール語版官報を所蔵している。本研究は、平成22年度に、マイクロフィルム化が完了しているフランス語版官報(1904-1915年、1945-1973年分)をカンボジア国立公文書館から購入した。本年度は、各時代の官報の分析とフィールド調査の知見を統合することで、同国における国家形成の過程と地域社会の変容を解明する。

研究目的・意義・期待される効果

カンボジア国立公文書館が所蔵するフランス語版とクメール語版のカンボジア官報

2008年7月27日に実施された第4期カンボジア国民議会選挙の際、投票を待つ有権者

本研究は、カンボジアの官報を利用した文献研究と、すでにフィールド調査を行っている社会科学者の知見を統合することで、カンボジアにおける近代国家形成の過程と、そうした過程が地域社会の人びとの生活をいかに変えてきたのかという問題を、長期的な時間軸のもとで検証する。

本研究の意義としては、研究資料の整備と、地域研究の方法論の発展という2点があげられる。研究資料の整備という点では、すでに1985年以降のクメール語版官報を収蔵する東南アジア研究所が、カンボジアのみならず東南アジア諸国の国家形成の過程や、フランス植民地支配の実態を比較研究するうえでも欠かすことができない官報資料を、網羅的に所蔵することが重要であると考える。一方、本研究は、近年著しい発達をみせている地域情報学の知見を取り入れ、研究成果の検討と公開という具体的な内容の部分でも、文献研究と社会調査の成果の融合をはかることを射程に入れている。

期待される成果としては、カンボジアの官報という未開拓の資料にもとづく独創的な論文をメンバーが発表していくことが期待される。さらに、ポル・ポト政権による断絶を経て、二度にわたる国家形成と地域社会の変容を経験したカンボジアを事例とすることで、現代社会の成り立ちを新たな視点から再考し、東南アジア地域研究を更新することが可能になると考えられる。

研究成果概要
カンボジア官報のマイクロフィルムの購入および納入は昨年度に完了していることから、今年度は複数回にわたる研究会の開催が主要な活動であった。結果として計3回の研究会を開催して、発表者には発表内容を論文として執筆し、東南アジア研究所が英語のみで刊行予定の査読誌Southeast Asian Studies(既刊の『東南アジア研究』の英語版)に寄稿するよう求めた。計8本の論考が集まり、うち5本が本共同研究メンバーによるものである。今後は査読を経て、2013年にカンボジア特集号として刊行される予定になっている。
 また、カンボジア官報を利用した共同研究のうち、最も調査が進んでいるテーマはカンボジア仏教である。本共同研究が今年度で終了することから、笹川が代表者、高橋美和と小林が分担者となり、平成22年秋に日本学術振興会科学研研究費補助金、基盤研究B(海外)にカンボジア仏教をテーマとして応募した。
平成22-23年度の研究会
  1. 京都大学東南アジア研究所 共同利用・共同研究拠点
    「国家形成と地域社会-カンボジア官報を利用した総合的研究」2011年度第3回研究会
  2. 日 時:2011年10月22日(土) 14:30~18:00
    場 所:上智大学2号館5階、2-510室
  3. プログラム:
    【発表(1)】
    秋保さやか(筑波大学大学院)
    「カンボジア南部農村におけるコメの生産、売買の変容―開発援助による新農業技術普及の影響に着目して―」
    【発表(2)】
    新谷春乃(東京大学大学院)
    「国定歴史教科書にみる『民主カンプチア』言説の変遷」
    主 催:
    京都大学東南アジア研究所、共同利用・共同研究拠点
    「東南アジア研究の国際共同研究拠点」タイプIII資料共有型「国家形成と地域社会-カンボジア官報を利用した総合的研究」
    (研究代表者、笹川秀夫、立命館アジア太平洋大学)
    共 催:上智大学アジア文化研究所
  1. 京都大学東南アジア研究所 共同利用・共同研究拠点
    「国家形成と地域社会-カンボジア官報を利用した総合的研究」2011年度第2回研究会
  2. 京都大学東南アジア研究所「東南アジア研究の国際共同研究拠点」共同研究「国家形成と地域社会-カンボジア官報を利用した総合的研究」(研究代表者:笹川秀夫、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部准教授)では、以下のように、本年度第2回目の研究会をおこないます。
    今回は、「国家建設をめぐる制度と政治:1979年以降のカンボジアの経験」と題して、極端な全体主義的支配を敷いたことで知られるポル・ポト時代以後に、カンボジアにおける「国家」がどのように建設されてきたのかを、法制度と国内政治の分析を中心に議論します。
    さらに、アフリカ地域研究と国際政治の専門家をコメンテーターとして迎え、以上のカンボジアの経験が、近年のアフリカ諸国などですすむ<国際支援下の国家建設>という問題状況とどのような共通性・独自性をもつのかを考えます。
    オープンな研究会ですので、ご関心をもたれる方はぜひお気軽にご参集ください。
  3. 日 時: 2011年7月14日 (木) 15:00-18:00
  4. 場 所: 京都大学東南アジア研究所・共同棟4階 会議室
    * 東南アジア研究所へのアクセスは、
    http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/about/access_ja.html を御参照下さい。
  5. プログラム:
  6. 15:00 小林 知(東南アジア研究所)「趣旨説明」
    15:20 坂野 一生(神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程)
         「1979年以降のカンボジア民事法制――体制移行と法制度」
    16:20 山田 裕史(日本学術振興会特別研究員PD)
         「カンボジア人民党による一党支配体制の構築:民主的制度の権威主義的運用」
    17:20 コメント1:アフリカ地域研究から 西 真如(京都大学東南アジア研究所)
         コメント2:国際政治から 佐藤 史郎(京都大学東南アジア研究所)
    18:00 ※懇親会
  7. 発表要旨:
  8. 「1979年以降のカンボジア民事法制――体制移行と法制度」
    坂野一生

     1979年のカンボジア人民共和国成立以来、カンボジアは法制度・司法制度の再建に取り組んできた。民主カンプチア時代の「法ニヒリズム」により既存の法制度・司法制度が徹底的に破壊され、立法のノウハウを有する人材や法の適用を担う法曹がほとんど存在しない中、国内の法制度の再整備と司法制度の再構築は困難を極め、必要な法律が不足するという「法の欠缺」状態が長く続くこととなった。
     1989年の憲法改正により、従前の社会主義路線が修正され、土地の私有が認められた。市場経済化の動きは、1992年からの国連の暫定統治により加速し、1993年のカンボジア王国憲法においては、国の経済体制として市場経済システムが正式に採用されたことから、今までになかった経済活動を規律する多くの法律が必要となった。これらの法律の起草については、様々なドナー国及び国際機関による技術支援が行われたが、これらの技術支援はしばしば支援する側の法的バックグラウンドを基に行われ、また、カンボジア政府内にはあるべき法体系についての統一認識が見られなかったことから、互いに抵触する法律が同時に存在するという事態を招いた。1979年以降、私法の一般法である民法が制定されなかったことが、この事態をより深刻なものにした。
     本報告では、1979年以降のカンボジア民事法制を概観し、法制度及びそれを運用する司法制度の整備状況とその特徴を、時代を区分して明らかにしようと試みる。また、個別の法律間の抵触の例を取り上げ、今後の課題と考え得る解決策を提示する。
  9. 「カンボジア人民党による一党支配体制の構築:民主的制度の権威主義的運用」
    山田 裕史
  10.  カンボジアは本年10月、同国における民主的政治制度導入のきっかけとなった「カンボジア紛争の包括的な政治解決に関する協定」(=パリ和平協定)の締結から20周年を迎える。国連暫定統治下での制憲議会選挙を経て1993年に発足した現体制下では、憲法が停止・中断されることなく正常に機能し、複数政党が参加する選挙が定期的に実施されている。いまやカンボジアは、ASEAN諸国の中では比較的「民主的」な国家とみなされるようになった。
     しかしその一方で、1993年体制下のカンボジア政治の実態は、1980年代との継続性を強く保っている。すなわち、同国では民主的政治制度の導入後も、カンボジア人民党による権威主義的な政治運営が継続しているのである。その結果、1990年代初頭にみられた「民主化」への流れは大きく後退し、2000年代末までに人民党による一党支配体制が成立するにいたった。
     それでは、いかにして人民党は民主的政治制度を維持したまま、一党独裁を敷いた1980年代よりも堅固で安定した体制を構築することができたのだろうか。本報告では、マルクス・レーニン主義を放棄した1991年以降の人民党の党内動向に着目しながら、現体制下における「党と国家の関係」について検討したうえで、人民党による選挙制度構築とその運用、議会運営、社会の統制について考察する。
  11. 問い合わせ: 小林知(CSEAS)
  1. 日本カンボジア研究会
  2. 日 時:平成23年6月25日-26日
  3. 場 所:京都大学東南アジア研究所 稲盛財団記念館 3階中会議室
  4. プログラム
    【6月25日(土)】
    13:00-13:10 趣旨説明(小林 知)
    13:15-14:25 個人発表(1)
     荒木 祐二(埼玉大学教育学部)
     「トンレサップ湖氾濫原に暮らす住民の生活様式と植物資源利用」
    14:30-15:40 個人発表 (2)
     初鹿野 直美(アジア経済研究所)
     「カンボジア2001年土地法とその施行における課題 」
    15:45-16:55 個人発表 (3)
     秋保 さやか(筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程)
     「現代カンボジア農村における農民組織活動の展開と社会関係の変容に関する一考察 
  5.  ――内戦終結以降の開発援助の影響に着目して――」
    17:00-18:10 個人発表(4)
     野口 博史(南山大学総合政策学部)
     「カンボジア南部一村落における社会階層構造とその動態」
    ※ 懇親会(19:00~)
    【6月26日(日)】
    10:00-11:10 個人発表(5)
     林 若可奈(大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程)
     「カンボジアのプノンペンにおける『学校をさぼる高校生』についての予備調査報告」
    11:15-12:25 個人発表 (6)
     新谷 春乃(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程)
     「『民主カンプチア』時代を巡る歴史教育―国定歴史教科書の検討を通して―」
    ※昼食休憩
    13:30-14:40 個人発表 (7)
     松井 生子(国立民族学博物館 外来研究員)
     「上座仏教との関わり方:カンボジアにおけるベトナム人とクメール人の境界に関する一考察」
    14:45-15:55 個人発表(8)
     吉田 尚史(早稲田大学大学院文学研究科博士課程)
     「仏植民地期カンボジアにおける精神医学・医療」
    16:00―17:00 総合討論
  6. 連 絡:小林 知(東南アジア研究所)
  1. 開催日:平成22年11月13日(土) 14:00~18:00
  2. 研究会名:東南アジア研究所「東南アジア研究の国際共同研究拠点」共同研究「国家形成と地域社会-カンボジア官報を利用した総合的研究」2010年度第1回研究会
  3. プログラム:
  4. 14:00~ 研究発表  笹川秀夫(立命館アジア太平洋大学)  「1900~1960年代のカンボジアにおける言語政策-正書法の確立と新造語の作成を中心として」
  5. 15:30~ カンボジア官報の閲覧
  6. 17:00~ 今後の研究会についての打ち合わせ
  1.