京都大学東南アジア研究所ナビゲーションをスキップしてコンテンツへ 日本語 | English
サイトマップ | ローカルページ
Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「極端気象リスク適応型社会構築のための国際共同研修の遠隔実施に関する予備的研究」
研究代表者:寶 馨(京都大学・防災研究所)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

本研究は次世代遠隔会議システムを活用してユネスコIHP国際水文学計画研修プログラムを遠隔トレーニングとして実施する際に生じる様々な問題を整理し、評価するフィージビリティスタディである。

研究目的・意義・期待される効果

パソコンを使う次世代遠隔会議システムは、遅いインターネット回線でもどことでも遠隔接続できる

受講者は自宅にいながらパソコン画面で講師の話を聞き、講演資料を読み、講師と音声や文字チャットでリアルタイムに質問できる

アジアの研究ハブという国際共同研究拠点としての資質を高めるためには、地理的に離れたアジア各地との日常的な研究コミュニケーションのための基盤整備が求められる。ポリコムに代表される従来型の遠隔会議接続は、接続先が同等設備を所有しており該当時間帯に設備を占有でき、また接続先ごとに遠隔会議専門の技術者を必要とするという点において、非常にコストがかかり、また実施のハードルも高いものであった。本研究では技術トレーニングを行う会場の講師と、世界各地の受講希望者のコンピューターとを直接相互接続することで、講師と資料や質疑の共有等を通して遠隔トレーニングを実施できる次世代型遠隔会議システムを実地の研究コミュニケーションにおいて総合的に検証しようとするものである。

次世代遠隔会議システムではその仕組み上、専門の遠隔会議システムや設備、人員をもたない遠隔地であっても、参加者に移動のコストを強いることなく会議やトレーニング(研修)に参加できる。さらには参加者ひとりひとりがコミュニケーションの空間に直接「接続」されるため、参加者はより主体的に参加できるメリットがある。このような理論的なユーザーエクスペリエンスのちがいが、実際の遠隔トレーニングにもたらす変化の評価とともに、経済性や柔軟性、技術的可用性について総合的に評価を行うことで、国際共同研究拠点のコミュニケーション・インフラストラクチュアとして次世代遠隔会議システムがどのように活用できるかについての知見を得ることが期待できる。

研究成果概要
過去2年間、本助成により次世代遠隔会議システムで実施してきたユネスコIHPプログラムでは、利用者の評価が非常に高く、今後も活用をはかっていくことが決まった。
 次世代遠隔会議システムは参加者ひとりひとりがコミュニケーションの空間に直接「接続」されるため、参加者はより主体的に参加できるメリットがある。参加者はそれぞれのパソコン画面を通じて直接仮想会議室に接続される。「部屋に設置された大画面を覗き込む一人」としての間接的な参加感覚であった従来の会議システムとは大きく異なる参加体験を生む。
柔軟性および可用性という観点からみると、本次世代システムでは、音声、映像、プレゼン(pdf,pptなど)、文字チャット、投票システム、ファイルダウンロードといった多様なメディアを一画面に完結させて利用できるという高い自由度をもつ。 会議はボタンひとつでまるごと録画し再生できる。操作は発表者自身にも可能となっており、従来技術では必須だった各サイトでの専門オペレーターの参与、ファイアウォール設定やネットワーク帯域確保、特別な会議室や会議専用機材等が一切不用となった。利用者ごとにメールアドレス単位で利用権限の範囲を設定できるため乱用も阻止できる。所内プロジェクトごとに会議室を必要に応じて無数に設置することも可能である(同時利用はライセンス費用により異なるが最低3室各100拠点計300拠点同時接続から各種ある)。昨年度は技術上の問題点であった0.6秒ほどの伝送遅延も大幅に改善され、相互会話が可能なレベル(0.2秒以下)になった。なによりもアカウント作成や専用ソフトのインストールが不要で、参加者はブラウザで指示された会議室アドレスにアクセスするだけで参加できるという利用者にとって技術的ハードルが非常に低いことは、国際研究コミュニケーションツールとして利用することを考えるとき、もっとも評価できる点である。
 本次世代会議システムは専用機材不要で超狭帯域でも利用できるため、会議設備をもたない相手先や、貧弱なインターネット環境でも会議主催・参加を可能にする、非常に浸透性の高い技術である。
このように高い柔軟性および高可用性を簡単な操作で実現している新世代システムは、遠隔ビデオ会議に文字通り革命的な変化をもたらしている。年間10万円以下の低コストで、研究所全員だけでなく世界中の共同利用研究者にも常時自由に利用できる仮想会議室として提供である。便利なものはメンテナンスが問題となるが、この次世代システムは「インターネット上のサービス」であるため、自動更新された新システムを利用でき、物理機器のメンテナンスや購入手配、設置設定に煩わされることもないメンテナンスフリーを実現している。類似技術のskypeでは現実的には同時に最大4箇所程度しか接続できず、かつプレゼン画面の共有機能は送出元がアップルマッキントッシュでしか実現できないし記録機能もないが、本システムではそのような制限がない。かように本システムは従来遠隔会議システムの欠点を見事に補完し、新しい研究コミュニケーションスタイルを生み出すポテンシャルを十分に持っていると評価できる。インターネット僻地を含む東南アジア各地で国際共同研究をすすめる本研究所にとっての必須基本研究コミュニケーションサービスとして、所員や関係者が自由に利用できるよう提供し、仮想国際会議開催など新たな研究コミュニケーションを創りだす活用をはかっていただきたいと提案する。
平成22年度の研究会
  1. 開催日:平成22年11月8-11,17-18日
  2. 研究会名:東南アジア研究所「東南アジア研究の国際共同研究拠点」共同研究ユネスコ IHPトレーニングコース
  3. 詳細情報:http://www.soi.asia/realtime/