京都大学東南アジア研究所ナビゲーションをスキップしてコンテンツへ 日本語 | English
サイトマップ | ローカルページ
Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「農村社会構造の広域アジア間比較――地域社会と国家権力、開発政策の相互規定性」
研究代表者: 柳澤 雅之 (京都大学・地域研究統合情報センター)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

広域アジアの農村社会構造を比較する視点として、1)地方行政の人的配置、2)地方政府における直接税の課税対象と徴税方法、3)小規模インフラ整備の主体、4)インフォーマル金融、とりわけ頼母子講などの集団的金融および親戚・友人間の金融、5)フォーマル金融の配分・返済方式等に着目し、それぞれの担当地域ないし担当国での現状を整理し、あわせて「農村社会構造」についての研究レビューを報告する。

研究目的・意義・期待される効果

ベトナム紅河デルタ村落では、村人の持つネットワークが村の個性を形作るため、隣り合う村ごとに生業が異なることもしばしば起きる。写真は、コックタイン 合作社がコネを利用し、中央や地方の研究機関に属する研究者やデルタ各地の流通関係者を招待してジャガイモ・ワークショップを開催した時のもの(2008 年5月)

南インドの灌漑用ため池。シーズン前でまだ水がほとんどない。

アジアの農村社会は、多様な「原型」を基盤としつつ、近年の経済発展に伴い、大きな変動を経験している。東アジアでは、近世に成立した「小農社会」(小農による強固な村コミュニティ)が原型となり、それが勤労精神や企業内組織の在り方にまで影響し、地域固有の発展パターンを生み出してきた。南アジアでは、「原型」としてのカーストに基づく職分制社会が、近年の都市化・工業化の中でその帰趨が注目されている。また東南アジアは、両文明圏のはざまにあって、小人口社会に特徴的なオープンな農村社会を形成してきたが、近年の地方分権化等、新しい動きの中でコミュニティ機能に一定の変質がみられる。以上のような、それぞれに個性をもつアジアの農村社会は、都市化・工業化、急速に進む少子高齢化といった、かなり共通の現代的課題に直面している。2年目の本年度は、「原型」としての農村社会構造の解明を目的として、上述した5つに主な焦点をあて、必要に応じて、地域ごとにトピックを設定する。これにより、アジア農村比較社会論を打ち立てることを試みる。

研究成果概要
2011年11月12日~13日に青山学院大学にて研究会を開催し、農村社会構造の理解のために、以下の点を中心にして地域間比較を行った。1)地方行政制度と行政単位の世態数ないし人口規模、および役人/役員の報酬の有無ないし多寡、2)地方政府(農村部)における直接税の課税対象と徴税方法、3)小規模インフラ整備のための資金の供出と実施方法、4)インフォーマル金融、とりわけ頼母子講などの集団的金融および親戚・友人間の金融、5)フォーマル金融の配分・返済方式。報告はバングラデッシュ(藤田)、インド(大野)、ウズベキスタン(樋渡)、日本(大鎌)、ベトナム(岡江・柳澤)、中国(坂下)、朝鮮(松本)であった。すなわち、経済活動に焦点をあて、地方行政制度の役割、村落の役割、両者の関係性を検討したことになる。その結果、行政と村落との関係は決して安定しているのではなく、とくに近代社会が形成される過程で、地域ごとの条件によって村落自治が強められたり弱められたりし、そのことが現在の農村社会構造の地域差を生み出していることが明らかになった。
平成22-23年度の研究会
  1.  International Seminar on Rural Social Structure in Vietnam at Hanoi
  2. 日 時:平成23年1月6日(木)
  3. 場 所: Hanoi Paradise Hotel (Hanoi City, Vietnam)
  4. Organized by:Hanoi Agricultural University, Collaborative Research on 'Comparative Study on Rural Social Structure in Asia' in the Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University (Leader: Dr. Masayuki Yanagisawa, Center for Integrated Area Studies, Kyoto University), and the Initiative 1 of Kyoto University G-COE Program 'In Search of Sustainable Humanosphere in Asia and Africa'.
  5. プログラム:
    9:30-10:10 
  6.  Koichi Fujita (Kyoto University), “Rural Social Structure in Asia in Comparative Perspective”
    10:10-10:40 Discussions
    10:40-11:40
  7.  Yoshihiro Sakane (Hiroshima University), “Family and Kinship System in Vietnam”
    11:40-12:10 Discussions
    12:10-13:30 Lunch
    13:30-14:30 
  8.  Takashi Okae (Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Japan),
  9.  “Discussing Vietnamese Village Based on Yumio Sakurai’s Book ‘The Formation of Vietnamese Village' and others”
    14:30-15:30 Discussions
    15:30-16:00 Business Meeting
    Other participants:
  10.  Masato Hiwatari (Hokkaido University),
  11.  Kei Kajisa (National Graduate Institute for Policy Studies),
  12.  Satoru Kobayashi (Kyoto University),
  13.  Akihiko Ohno (Aoyama Gakuin University),
  14.  Sumiaki Iwamoto (Tokyo Agricultural University),
  15.  Tamae Sugihara (Tokyo Agricultural University), and Huu Khanh and other participants from Hanoi Agricultural University.
  16. 問い合わせ先:藤田幸一(CSEAS)
  1.