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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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科研費プロジェクト

「東南アジア大陸部・西南中国の宗教と社会変容―制度・境域・実践―」
研究代表者:林 行夫

研究目的
西南中国をふくむ大陸部東南アジア地域では、近年のグローバリゼーションの下で、同地域の支配的な宗教である上座仏教の法制度的な再編とその多様な実践が急速に顕在化している。同時に、非仏教(イスラーム、キリスト教)にも、従来にはなかった動きがみられる。同地域の上座仏教を中心に、各国の制度レベルでの宗教政策・法制度の変遷と現況に関するマクロな基礎データを広範に蒐集・補充しつつ、民族と国民国家の境界が交錯する地域(境域)でのミクロなレベルでの宗教実践の動態を精査することにより、各地域とその住民が現在直面している社会変容の過程を包括的に解明・検証することが、本研究の最大の目的である。
業績概要(16年度)
現地調査は以下のように実施された。8-9月:北タイ地域のキリスト教徒社会と宗教政策(西本)、カンボジア在家女性修行者の組織(高橋)、南タイ・マレーシア北部の仏教徒マイノリティとムスリム社会の変容(黒田)、1-3月:東北タイ地域文化政策と宗教(林)、中国雲南省徳宏地区における仏教制度と宗教政策(長谷川)、同地域における出家行動と仏教徒の活動(林)、カンボジア在家女性修行者の個人史(高橋)、今年度よりの分担者による雲南=北タイの華人ムスリム社会の変容(王)、北タイの漢人社会における移動と宗教と民族意識(兼重)について、それぞれ関連省庁、研究機関および調査対象地域、農村において聴取、参与観察、文献蒐集を実施した。併せて、2月から3月にかけてカンボジア・プノンペンおよびシェムリエップの仏教に関連する古文書(ソテア)、中国雲南省西双版納・徳宏における仏教徒社会の変容(楊)に関する調査、東北タイにおける開発僧の組織(ピニット)にかんする調査を行った。また、研究分担者に同行した研究協力者のべ4名がそれぞれミャンマーの仏教サンガ法令、ミャンマーのケントゥンにおけるシャン仏教寺院組織(8-9月)、中国=ビルマ国境の仏教徒の活動、タイ・コラートのヤーモー信仰(3月)について基礎資料の蒐集、儀礼の参与観察を実施した。国内の研究会を二度(7月、2月)開催し、初回は前年度の成果公表と新規分担者を加えての調査研究主題の再検討、二回目は今年度調査成果報告と総括討議を行った。すでに成果の一部を学術雑誌や一般誌上で公開している。今年度を総括すれば、政情不安に陥った南タイ、マレーシアを除いて、これまで蓄積された法制度的資料の検討の上に、国境域での制度状況および実践に関する新たな一次資料蒐集が飛躍的に進めることができた。最終年度にむけて、研究の焦点は、国民国家上の制度から境域、実践における制度状況へと順調に移りつつある。
業績概要(15年度)
現地調査は以下のように実施された。8-9月:タイ国家仏教庁と仏教制度改変、カンボジア仏教のサンガ組織と宗教行政法制度(林)、タイのキリスト教組織、北部山岳民社会の教区の実態(西本)、東北タイにおける開発僧の個人史(ピニット)、12-1月:南タイ・ムスリム組織の変容過程(黒田)、タイ=ミャンマー国境のシャン仏教組織とタイ国サンガとの関係(村上)、2-3月:タイと中国で仏教徒の地域間交流の参与観察(林)、ミャンマーのバプテスト、カトリック教会の編成(速水)、タイ・チェンマイからみた西双版納仏教徒との交流(長谷川)、タイ・キリスト教ラフ人集落の宗教実践(西本)について、それぞれ聴取、参与観察、文献蒐集を実施した。併せて、カンボジア・プノンペンおよび市郊外の仏教に関連する古文書(ソテア)、中国西双版納の祭祀文書の蒐集と仏教儀礼変容(楊)に関する調査を実施した。また、研究分担者に同行した研究協力者4名がカンボジア、ミャンマー(8-9月、3月)、中国とタイ(2-3月)で、それぞれ研究関連機関で資料蒐集、集落で開催された儀礼の参与観察に参加した。SARS禍で中止を余儀なくされた渡航の代替処置として、個々の研究主題に関わる文献資料調査を実施するとともに(カンボジア=高橋、ベトナム=柳澤、中国=長谷川)、全体の成果公表に関わるデータベースを検討した。二度の国内研究会では渡航開始前の7月に研究主題と対象地域を検討、2月に調査成果報告を実施した。同会には京都大学東南アジア研究センター客員研究者(米国1、タイ2)も合流、蒐集資料の分析、次年度以降の調査指針を検討した。総括すれば、上記調査対象地の仏教、キリスト、イスラームに関する法制度、組織編成、国境間での信徒間の交流実態、観光化や国策による祭祀の動態について、最新の基礎資料と新しい知見を獲得した点で研究成果としてはもちろん、今後に向けてきわめて順調なすべりだしをすることができたといえる。
フィールド調査一覧
  1. 調査期間:平成17年12月 - 平成18年 1月
  2. 調査地域:カンボジア
  3. 調査内容: カンボジア政府の宗教行政について現地調査
  4. 研究者名:小林知
  1.  
出版
  1. 著者名:西本陽一
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:ラフにおけるキリスト教
  4. 雑誌名:金沢大学文学部論集 行動科学・哲学篇
  5. 巻・号:25号
  6. 掲載ページ:1-33
  1. 著者名:林 行夫
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:New Japanese Scholarship in Cambodian Studies: Introduction.
  4. 雑誌名:東南アジア研究
  5. 巻・号:42(4)
  6. 掲載ページ:387-393
  1. 著者名:林 行夫
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:隠蔽される身体と<絆>の所在−制度宗教の表象とタイ仏教危機論
  4. 雑誌名:岩波講座・宗教[第6巻−絆](池上良正編、岩波書店6月刊)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:215-243
  1. 著者名:高橋美和
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:カンボジア農村部における出産の医療化プロセス―変化する出産文化
  4. 雑誌名:カンボジア新時代(天川直子編、アジア経済研究所11月刊)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:379-445
  1. 著者名:村上忠良
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:タイ国におけるムスリム・アイデンティティの行方―宗教・民族・国家のはざまで
  4. 雑誌名:東アジアの家族・地域・エスニシティ―基層と動態(北原淳編、東信堂1月刊)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:305-322
  1. 著者名:林 行夫、合田 濤共編著(速水洋子、兼重 努など共著)
  2. 発行年:2005年
  3. 出版社:明石書店(東京)
  4. 書名:講座・世界の先住民族(ファーストピープルズの現在)・東南アジア
  5. 総ページ:336
  1. 著者名:速水洋子
  2. 発行年:2004年
  3. 出版者:京都大学学術出版会・Trans Pacific Press(メルボルン)
  4. 書名:Between Hills and Plains: Power and Practice in Socio-Religious Dynamics among Karen
  5. 総ページ:388
  1. 著者名:村上忠良
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:シャン仏教チョーティ派史素描−東南アジア大陸部における仏教実践の事例研究
  4. 雑誌名:宮崎公立大学人文学部紀要
  5. 巻・号:11(1)
  6. 掲載ページ:140-173
  1. 著者名:西本陽一
  2. 発行年:2003年
  3. 論文標題:The Religion of the Lahu Nyi (Red Lahu) in Northern Thailand: General Description with Preliminary Remarks
  4. 雑誌名:金沢大学文学部論集 行動科学・哲学篇
  5. 巻・号:23号
  6. 掲載ページ:115-138
  1. 著者名:長谷川清
  2. 発行年:2003年
  3. 論文標題:フロンティアにおける人口流動と民族間関係−雲南省、西双版納タイ族自治州の事例
  4. 雑誌名:民族の移動と文化の動態−中国周縁地域の歴史と現在(塚田誠之編、風響社9月刊)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:231-291
  1. 著者名:林行夫、Thongsa Sayavongkhamdy 編著(Yang Guangyuanなど共著)
  2. 発行年:2003年
  3. 出版社:Amarin Printing and Publishing(バンコク)
  4. 書名:東南アジア大陸部・西南中国地域の文化的多様性と保存(英語・ラオ語
  5. 総ページ:460
  1.