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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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国内研究会

東南アジアの自然と農業研究会 120回定例研究会 2005/4/22開催

テーマ 
「東南アジアの水産業開発と沿岸域資源管理 ―「責任ある漁業」の実現に向けて」
発表者
山尾 政博 氏(広島大学大学院 生物圏科学研究科)
発表要旨
東南アジアでは海面漁獲漁業と養殖業がめざましい成長を遂げてきた。また,輸出志向型の水産食品製造業の立地が進んで,世界有数の水産加工基地になっている。だが,海面漁獲生産量の約70%を占める沿岸漁業では,資源略奪的な漁獲行為と過剰な漁獲努力によって資源の減少・枯渇が深刻化している。沿岸漁業地域の貧困化率は,農業地域のそれに比べて高く,地域によっては,貧困の悪循環と資源の減少・枯渇が同時的に進行している。漁業地域社会の安定した発展のためには,持続的な資源利用と適正な資源分配が必要である。
国際連合食糧農業機関(FAO)が提唱した「責任ある漁業のための行動綱領(Code of Conducts for Responsible Fisheries)」は,持続的な資源利用を実現させる制度の充実,特に,資源の減少・枯渇を防ぐための予防的措置の導入を求めている。「責任ある漁業」をいかに実現するか,東南アジアでも地域版の行動動綱領作りが進められている。また,“Community-Based Fisheries Management”(CBFM)などに代表されるような,地方分権型・住民参加型の沿岸域資源管理方式の導入が各国でなされている。CBFMプロジェクトの経験を踏まえ,資源の利用と管理をめぐって,関係者間の責任分担関係のあり方をモデル化・政策化しようという動きが活発になっている。沿岸域資源の利用をめぐって,「共有の悲劇」的状況ばかりではない,「共有のドラマ」が生まれている。本報告では,東南アジアの水産業開発,特に沿岸漁業の構造的な特徴を明らかにしながら,沿岸域資源の利用と管理をめぐる最近の動きを紹介し,今後の方向性について検討してみたい。
キーワード
責任ある漁業,輸出志向型水産業,沿岸漁業,CBFM, 共有のドラマ