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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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国際シンポジウム

シンポジウム詳細

研究会名
International Workshop on Indigenous Eco-knowledge and Development in Northern Laos
報告書
2006年3月15〜18日、ラオス北部のウドムサイ県において、総合地球環境学研究所、ラオス国立農林業研究所 (NAFRI)との共催、ウドムサイ県農林事務所やウドムサイ県ナモー郡、ナモー郡アイ村の協力を得て、国際ワークショップ “Indigenous Eco-knowledge and Development in Northern Laos”を開催した。このワークショップは、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「アジア・熱帯モンスーン地域における地域生態史の総合的研究:1945-2005」(代表者:秋道智彌教授)および東南アジア研究所とラオス国立農林業研究所との共同研究 “People, Environment and Land Use Systems in Mainland Southeast Asia”(PELLUSA)の一環として行われたものである。私たちの研究活動を現地の政府職員や住民に知ってもらい、これまでの研究成果を彼らと共有するとともに、彼らからのフィードバックを踏まえて研究活動の新たな展望を拓くことを目的としたものである。これまでプロジェクトを支援してきてくれたカウンターパート(NAFRI)や現地政府職員、さらに調査村の住民との話し合いをきっかけに実現に至った。
ワークショップ第1日目は、ウドムサイ県農林事務所の会議室で開催した。日本側19人、NAFRIとビエンチャン市からの参加者5人、ウドムサイ県とポンサリ県からの参加者24人の合計48人が参加した。参加者が主に現地政府職員で英語だけでは十分にコミュニケーションできないので、ラオス語と英語のパワーポイントを用意し、基本的にラオス語で発表し、英語へ逐語通訳した。県副知事のカムペーン氏と当研究所の河野泰之氏による開会の挨拶に続いて、生態系と遺伝資源保全、焼畑農業と森林保全、農牧業とその普及活動に関する3つのセッションで、プロジェクトメンバーやNAFRIのスタッフによる12の発表があり、熱心な討論が繰り広げられた。最後に、県農林事務所副所長のフムパン氏と京都大学大学院農学研究科の縄田栄治氏が閉会の挨拶を行った。当日は、ラオスの新聞やラジオが取材にきてくれるなど、盛大な会となった。
第2日目は、アイ村へ移動して開催した。アイ村は、2003年より私たちの研究プロジェクトの共同調査地となっている。参加者は、日本側19人、NAFRIからの参加者4人、県・郡職員が7人、周辺の18ヶ村から30人、アイ村の村人90人以上であり、合計150人以上が参加する盛大な会となった。会の主役が村人であることから、日本人が、ラオス語のパワーポイントを用いて、ラオス語で発表した。トピックは、アイ村でこれまで行ってきた研究活動の紹介と、日本やマレーシアでの稲作についてであった。途中、会場に入れなかった村人が会場近くの家屋に集まりすぎて、ベランダが倒壊するなどのハプニングもあったが、テレビ局が取材にくるなど予想以上に大きな会となった。
また、2日間にわたり落合雪野氏(鹿児島大学総合研究博物館)が "Decorating with plants - Job's tears materials from the world"と 題した世界のジュズダマ資料の展示と解説を行い、ワークショップを盛り上げた。
第3日目はエクスカーションで、13人がナムヨーン村を訪れた。この村は、アイ村の近くのナムグン村から森の中をなんども小川を越えながら、2時間歩いたところにある。彼らは、この地域ではコンサート族と呼ばれており、言語学的にはチベットビルマ語系の人たちである。生業や衛生関係のことについて聞き取りを行った後、彼らの生業基盤である焼畑地を見学した。
第4日目は、9人が参加して、ピーマイノイ村を訪れた。標高約1200mに位置するアカ族の村である。4WDの車で2時間、山道を行ったところにある村で、今年から車での通行が可能になった。ここでも、生業などについて聞き取りを行った後、焼畑地を見学した。隣接するナムヨーン村と対照的に、焼畑地が不足してきており、他の村から焼畑地を借用したり、焼畑2年目の畑でトウモロコシを栽培するなどの試行錯誤が印象的であった。
今回のワークショップは、NAFRIのブントーン所長とスタッフや県農林事務所のネーン所長と職員の方々の協力なくしては成功しなかった。またアイ村の村人は、午前3時から宴会の用意をするなど、献身的に協力してくれた。これらの支援があったからこそ、ラオスではあまり例をみない現地でのワークショップが実現した。1999年から始まった東南アジア研究所とNAFRIとの連携関係、これまでにウドムサイ県で調査を実施してきた大学院生と現地政府職員や村人との友好関係が生かされたと思う。このワークショップが、私たちとラオス社会の信頼関係をさらに強固にし、現地政府職員や村人と私たちの共同作業である研究のさらなる発展に貢献することができれば望外の喜びである。ワークショップのオーガナイザーとして、村の役員の人たちや県との話し合いに立ち会い、ワークショップ開催に至る村内や村と県との合意形成の過程をつぶさに体験できたことも大きな収穫であった。
(富田晋介)
写真

   ワークショップ第1日目の集合写真。   
県農林事務所の会議室にて。

ワークショップ第2日目の懇親会。
アイ村の集会所で開催した。

ワークショップ第3日目のエクスカーション。
火入れの準備を進めている焼畑地にて。