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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

研究プロジェクト

科研費プロジェクト

「東南アジアにおける地域主導型図書館モデルの構築−発展途上国における社会教育の中心」
研究代表者:北村 由美

研究目的
本研究の目的は、ラオスを対象として、上述のような図書館に期待される機能と現状の乖離を踏まえ、社会教育の中心基盤としての地域主導型図書館が具備すべき条件を明らかにし、その普及のためのモデルを構築することである。モデルの構築に際して、旧インドシナ諸国のカンボジアやベトナムをはじめとする発展途上国への適用を視野に入れる。具体的な内容は以下の3点に要約できる。
  • (1) 既存の援助国主導型の図書館を対象として、その運営実態・蔵書内容・利用状況などを調査・分析する。
  • (2) 首都ビエンチャンや地方において、寺院など図書館以外の社会教育基盤の運営実態・蔵書内容・利用状況などを調査・分析する。
  • (3) 現地語中心の蔵書形成方針や社会教育に焦点を当てた人材育成と事業展開、自立的な財政を中核とする地域主導型図書館モデルを構築する。
業績概要(16年度)
初年度である本年度は以下のことを行った。
  • (1) インドネシアとラオスにて現地調査を開始し、識字教育・読書推進運動や情報共有推進活動を行っている現地NGOと政府機関の活動内容とその成果に関する文献の収集を行った。また、活動の責任者および各種プログラム参加者に対して質問調査を行った。
  • (2) 東南アジアにおける図書館および司書制度成立の歴史的背景に関する文献調査を行い、短文・論文の形式で発表した。
調査の結果、以下の点が明らかになった
  • (1) インドネシア・ラオスともに、公的機関では教育省ノンフォーマル教育部門が識字教育を職業訓練とともに生涯教育プログラムのひとつとして行っているが、各種図書館との連携はない。
  • (2) インドネシア・ラオスともに、各種活動は海外からの援助に依存しているが、ラオスの方が継続的な活動が少なく成果が定着していない。
  • (3) インドネシアでは、経済危機後、義務教育である小中学校からのドロップアウトが増加しており、識字率の維持・向上は引続き課題である。
  • (4) インドネシアでは、地元のNGOが読書推進運動を情報リテラシー教育の一貫として、様々な表現能力育成の基礎作りのために行っているケースが多く見られた。
  • (5) ラオスでは、日本のNGOが中心となって識字活動、図書館建設、出版補助などを行っている。しかしながら、図書館制度・司書制度がほとんど機能しておらず、国語であるラオス語による出版物ですら年間約50点程度という現状では、継続的な識字率向上はなお困難である。