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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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国内研究会

2012年3月

  1. 海の観光に関する研究会
  2. 日 時:2012年3月12日(月)13:00~15:00
  3. 場 所:京都大学東南アジア研究所・共同棟4階セミナー室
  4. 話題提供者:市野澤潤平さん(宮城学院女子大学)
  5. 演 題:「タイ領アンダマン海におけるダイビング観光実践の人類学的素描:海棲生物の観光利用をめぐる予備的考察」
  6. 要 旨:
  7.  20世紀後半以降、沿岸域(特にサンゴ礁)における海棲生物資源の利用形態に変化が生じている。世界のサンゴ礁海域における観光業の経済価値は、漁業が生み出すそれを上回ったという。漁業という観点からは遠洋に比して限定的な価値しか持たなかったリーフ(サンゴ礁)が、観光という文脈において巨大な経済価値を生み出しているのである。しかし、漁業/漁撈(民)研究は膨大な蓄積があるのに比して、海棲生物の観光利用に関する研究は、未だ寡少である。
     ホエールウォッチング、ドルフィンスイム、ダイビングなどの成立は、従来は〈とる〉対象であった海棲生物と人間との関係の、質的に新たな展開である。生物資源を〈みる〉行為は、それ自体が目的化するとき、消費的利用としての〈とる〉行為とは異質なものとなる。発表者は、2006年からタイのアンダマン海沿岸の調査を開始し、従来的な〈とる〉こととも、〈とる〉ための手段/過程として見ることとも異なる、海棲生物を〈みる〉体験が、観光という文脈において構築され商品化されている実態を、多面的に読み解くことを目指している。
     本発表では、海棲生物を〈みる〉利用の代表であるダイビング観光を取り上げて、コモンズ論的な観点から、その特質を概観する。まだ萌芽的な報告に留まるが、ダイビングなどの〈みる〉利用においては、従来的な〈とる〉利用とは全く異なる形で、海棲生物が資源として立ち現れることを示唆したい。