「山地」と「平地」という二項対立にもとづく社会編成の比較考察は、タイをはじめとする東南アジア大陸部研究において行われ、以下のような地域・生態・社会に関する複合モデルが提出されてきました。
平地 |
山地 |
政治的中心 |
政治的周辺 |
国家 |
少数民族 |
開発 |
低開発 |
灌漑集権社会 |
環境依存的小社会 |
大伝統(文明) |
小伝統 |
定着農耕(水稲) |
焼畑移動耕作(陸稲) |
単系出自集団 |
双系的親族範疇(キンドレッド他) |
世界宗教 |
アニミズム |
このような「山地」vs.「平地」という地域空間の対置にもとづく二項対立は、あくまでも静的ないし固定化したモデルであり、地域研究の精緻化にともなって総合的な再検討の時期を迎えています。本研究会では、主に以下の三つの問題を中心としながら「山地」vs.「平地」パラダイムのバージョンアップを試みるものであり、トランス・ディシプリンに加えて、トランス・リージョナルな視点から、他地域への汎用性の高い議論を目指すものです。
1)嶼部東南アジア社会へのモデルの適用性
2)国民国家形成のもとでの「山地」/「平地」関係の動態的変成
3)東南アジアをこえた他地域(スラブ、アフリカ、アメリカス等)へのモデルの汎用性